アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のヘミシンク体験とスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

己の死を伝えに来たオモチャ屋さんのご主人

 これも20年以上前、ある病院で喉頭癌多発肺転移の、まだ40代と若い男性、街のオモチャ屋さんのご主人が終末期医療で入院されておりました。もう血圧が低下傾向で尿量も少なくなって来ていましたが、なによりも問題は呼吸苦であり、多数の肺転移巣で気管支が圧迫され、痰がむせており、咳に苦しめられます。多くの癌疼痛に対してモルヒネなどの麻薬製剤が有効なのですが、気道の狭窄に伴う咳、呼吸苦に対しては鎮咳剤も無力であり、低酸素脳症から幻覚が見えるようで、ある夜中、咳と恐怖にのたうち回っているとのことで病院に呼ばれました。
 中年の看護師さんと咳止めの注射をしたり、吸入をかけたり、背中をなでて去痰を促して、、、。でも患者さまは「だめだ〜、殺してくれ〜」と声にもならない声を発して、ひたすら咳き込んで苦しんでおりました。癌の末期の状態ですので人工呼吸器の適応はなく、そういう説明が主治医よりなされておりましたが、それにしてもこの苦痛は和らげなければならないと確信いたしました。
 30代かと思われます奥さまに「鎮咳剤や吸入だけではこの苦痛は取れません。あるいは鎮静剤で意識を絶てば苦しい思いはしないで済むかも知れません。ただ、その場合に呼吸が抑制されて、状態を悪化させることも考えられます」と告げました。はっきり「安楽死」のようなことを申したわけではありませんが、奥さまは私の申すニュアンスを理解したようで、「少し時間を下さい」とのことでした。

 鎮静剤を希望した妻の涙

 1時間後、夜中の2時を回っていたと思いますが、奥さまよりナースコールがあり、どうにも見ていられない、本人も苦痛を和らげて欲しいと言っている、と涙ながらの申し出がありました。「それでは、少ない量からやりましょう」と申し上げて、生理食塩水20mlにホリゾン1/2Aを混ぜて静脈注射をしました。すると、注射した5分後には眠りだして、浅いながらも呼吸は穏やかとなりました。しばらく看護師さんと背中をさすって、酸素マスクを固定し直してナースステーションに戻りました。

 ナースステーションのカーテンを揺らして

 4時過ぎだったと思います。十分急変はあろうかと、ナースステーションで仮眠をしておりますと、まず先ほどの看護師が「あっ」と言いました。私もなにか気配がして頭を上げましたところ、ナースステーションのカーテンがサラサラサラと揺れました。看護師と目を見合わせて「来たね!」と言った瞬間、ナースコールが鳴り、駆けつけてみるとオモチャ屋さんのご主人は呼吸が止まっておりました。奥さまと我々にわずかながら感謝しているかのような安らかな死に顔でありました。

 肉体が滅んだ後に霊体が遊離して、我々に己の死を伝えに来たのだと解釈できますが、自然科学に身を置いておりますと、そうしたものには目を瞑っている自分がおりました。
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