FC2ブログ

アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

多発性肝転移を伴う進行胃癌にmFOLFOX6が奏功した1例


 多発性肝転移を伴う進行胃癌に対する、(大腸癌治療としては)古くて(標準的で)、(胃癌に対しては)新しい化学療法 mFOLFOX6が極めて効果がありましたのでここに記録します。


◇ はじめに

 我国の胃癌罹患率は、減少傾向にあるものの、世界中では最も多いことが以前から指摘されております。日本食における塩分摂取が多いこと、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などが原因として挙げられております。

 味木和喜子,津熊 秀明 「固形癌の地域・人種差」PDF

胃癌の国別罹患率
胃癌の地域・人種別罹患率(人口10万人あたり)

 これほどの「胃癌大国」である我国で、当然のごとく胃癌治療の長い歴史がありますが、手術はともかく、化学療法(抗がん剤)に関しては今なお新しい治療法を模索しているのが現状であります。今回、多発性肝転移を伴う進行胃癌に対してmFOLFOX6療法が奏功した1例を経験したのでここにご報告いたします。


◇ 症例

 年/性 50代/男性
 主 訴 心窩部痛
 現病歴 平成xx年10月17日、数日前からの心窩部痛を主訴に受診
 既往歴 特記事項なし
 家族歴 兄に胃癌と大腸がん
 現 症 貧血黄疸なし、心窩部に圧痛あるも腫瘤触知せず


◇ 検査所見

 採 血 貧血、低アルブミン血症、肝障害、胆道系酵素異常、腫瘍マーカー高値
     Hb 9.8, Alb 2.9, AST 41, ALP 552, CEA 10.5
 画 像 胃内視鏡 胃前庭部小弯中心に半周を占める壊死組織を伴う5型胃癌、幽門狭窄はなし
          生検結果:中分化型管状腺癌(tub2)
     胸腹CT 胃幽門部隆起性病変、リンパ節転移、多発性肝転移、門脈腫瘍栓、
          腹水なし、肺転移なし

10:23:18GIF03
10:23:18 GIF02
胃内視鏡:胃前庭部小弯を中心に半周性の隆壊死組織を伴う起性病変

10:24:18 CT00
腹部CT冠状断面:胃前庭部に内腔に突出する隆起性病変

10:24:18 CT001
10:24:18 CT07
腹部CT:肝ドーム下S8、後区域S6、その他、外側区域にも多発転移巣、著明なリンパ節転移


◇ mFOLFOX6

 01)生食 100 ml + デカドロン 6.6 mg、アロキシ 0.75 mg:30分 点滴静注
 02)5% 糖液 250 ml + レボホリナート 200 mg:120分 点滴静注
 03)5% 糖液 250 ml + エルプラット 100 mg:02と同時に120分 点滴静注
 04)生食 50 ml + 5-FU 500 mg:全開で点滴静注
 05)生食 500 ml + 5-FU 750 mg x 4:46時間 持続点滴静注

 以上を採血結果、全身状態を観ながら2-3週毎に全9クール施行しました。2クール目終了時点より、心窩部痛の軽減、食欲の向上が認められました。全期間を通じた副作用として、軽度の血小板減少は見られましたがスケジュールを延期、中断するほどではありませんでした。悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状はなく、痺れや痛みなどの末梢神経障害は見られませんでした。


◇ 半年目検査

 採 血 貧血持続、アルブミン上昇、肝障害なし、胆道系酵素低下、腫瘍マーカー正常化
     Hb 8.8, Alb 3.4, AST 25, ALP 373, CEA 5.0
 画 像 胃内視鏡 胃前庭部小弯の腫瘍は著明に縮小
          生検結果:悪性細胞は検出されず
     胸腹CT 胃幽門部隆起性病変、リンパ節転移、多発性肝転移は著明に縮小

04:18:19 GIF01
04:18:19 GIF03
胃内視鏡:胃前庭部の腫瘍は著明に縮小

04:18:19 CT02
04:18:19 CT05
腹部CT:胃内に見られた腫瘍および全区域(S8)転移巣は消滅、後区域転移巣は著明に縮小、リンパ節転移消滅


◇ 考察

 当ブログにおいては3年半前の2015年11月15日、胃癌で亡くなられたフリーアナウンサー 故 黒木 奈々 さん(享年32歳)の本をご紹介いたしました。

 2015.11.16 医学の無力に憤る! 故 黒木 奈々 さん「未来のことは未来の私にまかせよう」

 本の中に紹介された癌研有明における化学療法はTS1の経口投与とシスプラチン(cisplatin, CDDP)の静脈内投与であり(HER2陰性例にて分子標的薬 トラスツズマブ [ハーセプチン] )は適応外)、その凄まじい副作用、主として悪心・嘔吐に苦しめられる様子が記されておりました。それほどの苦しい思いをしても、2014年7月の発症から2015年9月19日に永眠するまではわずか1年2ヶ月と、ほぼ治療効果は皆無であったことが伺われます。これが本邦における最先端 胃癌治療の現状であります。
 これに対して、大腸癌においては、2002年にオキサリプラチン(oxaliplatin, L-OHP) が導入され、その有効性が示されて来ました。同じ白金製剤でも、シスプラチンに比較してオキサリプラチンは、腎障害、悪心・嘔吐の副作用がほとんどなく(代わりに末梢神経障害がある)、さらには、生化学的調整(biochemical modulation) の概念の導入により、5FU(5-fluorouracil)、ロイコボリン(leucovorin, LV) を併用したFOLFOX療法が確立され、長期連用の治療が可能となり、約10年にわたりかなりの有効性が報告されて来ました。
 大腸癌に対する著明な有効性が示され、副作用の少ないFOLFOX療法の、胃癌治療への適応が待たれるところでありましたが、やっと遅まきながら、2017年2月27日、厚労省より「「フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチン【注射薬】の3剤併用を、医学的妥当性があると判断された場合『胃がんに対するFOLFOX療法』として投与することを審査上認める」との報道がなされました。

FOLFOX胃癌適応の記事

 今回経験した症例はまだ発症から7ヶ月しか経過していず、今後も観察を継続して参りますが、上述のごとく、画像上、奏功が認められ、臨床症状としても食欲の増進があり、長期予後が大いに期待されます。


◇ 結語

 多発性肝転移を伴う進行胃癌に対してmFOLFOX6療法が奏功した1例をご報告しました。

関連記事
スポンサーサイト