アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

中年期のうつ病 その原因論と予防法


 大学の同級生で、入局した教室は異なり一緒に仕事をしたことはありませんが、同じ外科に進んだ男がうつ状態に陥り、欠勤を続けた後に自死したとの話を聞きました。数年前の出来事だったそうですが、孔子が言うところの「知命:五十にして天命を知る」の歳に差し掛かり、自分の人生に於いて最も重要なものは何かを知る、自分はどのような役割をもってこの世に生を受けたのかを知る、そんな年代でのうつ病の発症、私の中では学会で偶然会った際の明るい笑顔の記憶しかない彼に何が起こったのだろうと考えさせられます。今回は、「メンタル障害とそのケア」のカテゴリで、ともすると自分にも起こり得る、中年期のうつ病に焦点を絞り、その原因論と予防法を考えてみます。なお、精神医学的な観点からのより詳細なメカニズムや診断基準、薬物その他による治療法については他所に譲ります。


◇ うつ病の概要・疫学

 精神科の教科書の引用とネットで調べられるものから、うつ病についてごくごく浅い内容で概要・疫学をご紹介いたします。

1.うつ病の定義

 うつ病とは「気分が落ち込む」、「気が滅入る」、「もの悲しい」と言った「抑うつ症状」が長期に継続するものと定義されます。不眠、頭痛、肩こりなどの身体症状を伴い、「自殺念慮」、「自殺企図」にも発展し、自殺率は15%にも及びます。

2.うつ病患者数の推移

 ここでは厚生労働省「患者調査」で発表されているうつ病・躁うつ病の疫学が手に入りましたがので供覧します。なんとなく、外来で多くの患者に接しているとうつ病患者は増えているような印象を受けておりましたし、芸能人や知名人でうつ病に罹患したとの話がちらほら聞こえてきます。3年毎の年別うつ病・躁うつ病患者総数を見ますと(下図)、果たしてうつ病の患者数ははっきり増加傾向しておりました。1996年が40万人台であったのが、2014年には110万人を超えてきて、恐らくは現在(2017年)は120万人に達していると思われ、20年間で約3倍となったものと推定されます。単純に考えれば、周囲の知人友人でうつ病と言う話を聞くのが20年前と今では3倍に増えていると言うことです。これは精神科に受診してうつ病・躁うつ病と診断される症例の数でありますので、単純に有病率の増加のみならず、患者の受診率の増加も背景にあろうかと存じます。また、どの年においても女性の方が男性を上回っていることも特筆すべき点であります。

【うつ病・躁うつ病の年別(3年毎)男女別患者総数】
うつ病、躁うつ病総患者数

3.年齢別男女別うつ病患者数

 こちらも厚生労働省「患者調査」2014年のデータであります。どの年齢においても男性よりも女性の方が患者数は多く、年齢別のうつ病患者数の分布は男女で若干の相違が見られます。男性は40歳代が最も多く、各年代ほぼ左右対象の正規分布を示しております。これに対して、女性も40歳代にピークを迎えますが、50歳代で減少するものの60歳代で再度の増加が見られ2つ目のピークがあります。70歳代も50歳代とほぼ同数の患者がいるようです。また、80歳代では女性の患者は男性の3倍以上と最も男女差が見られております。

【2014年におけるうつ病・躁うつ病の年齢別男女別患者数】
2014年のうつ病総うつ病連嶺別患者数


◇ 中年期うつ病の原因論

 子供からご老人まで、幅広い年代に発症するうつ病でありますが、その原因として遺伝性、脳の機能的要因や他の精神疾患との合併など、様々な要素が言われております。病前性格として「メランコリー親和型性格」が指摘されており、「几帳面、良心的、配慮できる」といった特徴がうつ病発症に関与しているとの考え方もあります。ここでは、もっと一般的な発想で中年期の特殊性に注目し、その原因論を考えます。
 中年期は、上でも触れました孔子の言葉で例えるならば、40歳代が「不惑:四十にして惑わず」とされ、何が起きても動じることなく自由に物事を見ることが出来るようになり、50歳代が「知命:五十にして天命を知る」であります。仕事や家庭において、それまでに積み上げてきた経験に基づき様々な責任を果たす人生でもっとも充実した時期と思われます。しかしながら、この年代特有のうつ病を引き起こす要因があると考えます。

1.両親の病気や介護、死別など

 40〜50歳代となるとその両親は70歳代から80歳代にも差し掛かります。悪性腫瘍、脳血管疾患や循環器疾患に罹患して病院への通院や入院、手術などが必要となり、その後には老後の介護の問題が発生する場合があります。それまで、何も考える必要のなかった両親への対応が余儀無くされ、経済的、時間的な負担と責任が生まれます。子供の頃から心の中で頼りにしていた存在が、逆に頼られる存在に変わることで、いよいよそうした時期を迎えてしまったとの認識は、抑うつ気分を引き起こし得る心の負担へと繋がるでしょう。
 同様に、両親との死別は必ず確実にやって来ます。多くの場合、親は自分を育ててくれ、自分に期待してくれた存在、最も身近の人生の先輩であり、常に自分を見つめてくれる存在であります。私も5年前に父親が病死して、臨終の時も、その後しばらくも、忙しさもあって、それほど情緒的になることはありませんでしたが、徐々に心に重くのしかかるものがありました。父の死別から2年が経過したところで、その思い出をブログに載せたりもしました。

 2014年03月11日 「22年ぶりのある会話」

 幸いなことに、私はまだうつ病にはなっていないと思いますが、40〜50歳代にかけて、父親の発病から死別までの一連の流れははっきりと「喪失感」として自覚されました。そうした経験から、中年期うつ病の原因論として、両親の身体状況の変化を一番手に挙げさせていただきました。

2.身近な存在の喪失

 親だけではありません。仕事や私生活において極めて親密な関係にあった人物との別離も抑うつ状態を引き起こす要因にはなります。学生時代の中学、高校、大学の卒業で友人との別れは必然的に訪れますが、誰でもその直後に新しい出会いがあります。中年期の別れは、同僚もしくは自分の転勤や退職であったり、それぞれの都合でこれまで通りに会えなくなったり、思わぬ争いから疎遠になったりして発生します。もちろん死別や離婚も大きな別離であります。そして、この年代は新しい出会いに乏しいのは事実です。親と同様、親しい友人、家族や仕事上のパートナーとの別れは、やはり心にぽっかりと喪失感を生むこととなります。

3.身体能力の低下

 種目によって異なりますが、多くのスポーツ選手が30歳代で引退する傾向にあります。40代、50代でなお、現役で上達が望めるのはゴルフくらいかも知れません。個人差はあるでしょうが、人間の身体能力は20〜30歳代がピークかと思われ、ある調べでは、努力を積み重ねた場合の身体能力の、第1回目のピークは19歳で、2回目はフルマラソンの全日本ランキングが最も上位の24〜26歳、そしてスピードが身につく最後のピークが34歳とされます。40〜50歳代に身体能力が低下するのは明白であり、これが気分不快から抑うつを引き起こす原因となります。
 若い頃にできたことができなくなります。例えば徹夜や長時間に何かに集中することができなくなり、スポーツにおいても仕事においても、スピード感やスタミナ、馬力などが衰えて行きます。日常生活において、体力や活力、精力の低下は、これも大きな「喪失感」から意欲の低下に繋がります。「歳をとった」、「衰えた」との発想はうつ病を引き起こす十分な要素となります。その上、高血圧、糖尿病などの成人病を発症するとますます抑うつ気分を引き起こす、中年期はそんな年代と言えます。

4.燃え尽き症候群

 これは主に仕事に関わるものです。「燃え尽き」という言葉どおり、献身的に努力した人が、期待した結果が得られずに感じる徒労感または欲求不満から、心身ともに疲れ果てて、突然、無気力に陥ってしまう状態です。例えば、若い社員が自分より上の立場につき、それまで努力してきたことが無意味に感じられて、仕事への意欲を失ってしまうようなケースです。抑うつ気分やいらいら感などが生じ、自殺にいたることもあります。慢性的で絶え間ないストレスが持続して、意欲を無くし、社会的に機能しなくなってしまう症状で、一種の心因性(反応性)うつ病とされます。

5.昇進うつ病

 燃え尽き症候群とは反対で、職場において努力の結果、やっと昇進を果たしたとたん、急にそれまでの気持ちが萎えてしまい、周囲からの期待や責任が重圧となって、うつ状態に陥ることがあります。昇進うつ病では、不眠や全身倦怠感、頭痛や腹痛などの身体症状を訴えることが多く、心身の不調から出社拒否となり、休職や退職に追い込まれる場合もみられます。

6.上昇停止症候群

 もう出世は見込めないという現実を知り、「先が見えた」ことで虚しさに襲われ、うつ状態を招くこともあります。

7.リストラに伴ううつ病

 新しい部署への配置転換や転勤、関連会社への出向、リストラといった現実は中高年サラリーマンにとっては大きな精神的ストレスとなります。リストラへの不安や、失職による経済的、精神的打撃から抑うつ気分におちいる人は多く見られます。また逆に、リストラを進める、いわゆる「肩たたき」の側の人が、その責任の大きさや、罪悪感、葛藤などを抱え込み、うつ病におちいる場合もあります。

8.サンドイッチ症候群

 中間管理職の立場で、上司と部下の板ばさみになり、世代間のコミュニケーションギャップから抑うつ状態に陥る場合があります。学校の教師が校長などの上司と生徒の間でストレスや葛藤を覚える場合もこれに当たりますし、家庭の主婦が主人と子供の間に挟まれ抑うつ状態となることもあります。

9.テクノストレス症候群(テクノ不安症、テクノ依存症)

 アナログ世代に育った中高年で、コンピューターなどのデジタル環境に拒否反応を示し、不安や焦りから抑うつを引き起こすことを「テクノ不安症」と言います。逆に、若いうちからゲームなどのデジタル環境にのめり込んでいて、デジタル思考に偏りすぎたために、人間らしい感情が失われ、相手の気持ちを汲み取れず、対人関係に支障を来す場合を「テクノ依存症」と言います。


◇ 中年期うつ病の予防

 精神療法や薬物療法など、うつ病の治療法については他に譲ります。ここでは、中年期の、うつ病を発症する前の段階における予防法を考えます。日常に心がけることでうつ病に罹らない工夫です。例えば原因の除去ですが、上で箇条書きしたもので、除去あるいは軽減できるものと、そうではない、自分ではどうにもならないものはあります。身体能力の低下はある程度は軽減できますが、職場でのストレスから逃げてばかりと言うわけには行きません。いろんなことに対してあまりストレスを感じない思考パターンはあるでしょう。

1.アンチエイジング

 身体能力の低下が中年期うつ病の原因となり得ることを説明しました。これに対しては、健康に留意し、規則正しい食生活、アンチエイジングに努めれば、ある程度は軽減できます。そうした行為そのものは気分を高揚させて十分にうつを予防できると思います。当ブログではこれまで何回かアンチエイジングを取り上げて、ある種の食料品や禁煙、快眠について触れて参りました。以下にリンクを提示します。

 2014/08/11 科学?/非科学? ファスティング(断食)の美容・アンチエージング・疾病における有効性を検証

 2014/09/07 解明されつつあるサーチュイン遺伝子のアンチエイジング効果

 2014/10/18 アディポネクチン (Adiponectin)、その脅威のアンチエイジング効果

 2015/05/30 アンチエイジング anti-aging 入門

 2015/07/10 ただのダイエット・サプリ(食品)ではない ラクトフェリンでアンチエイジング!

 2015/09/02 最大のアンチエイジング、禁煙と受動喫煙の排除

 2015/11/26 「焼き海苔」食生活でアンチエイジング!

 2016/02/15 食物繊維でアンチエイジング

 2016/06/13 加熱梅干しの優れたアンチエイジング効果

 2017/07/27 快眠でアンチエイジング! 〜 睡眠のメカニズムと快眠を得る工夫 〜

2.「二分割思考」の解消

 原因論で示しました通り、家族や友人との別離や会社での出来事など、中年期の人間が社会生活で起きた変化に反応するかたちでうつ病が発症することが多いようです。同じことが起こってもある人は平常心を保てて、ある人は憂鬱から抑うつへと進行してしまう、その違いは思考パターンにあると思います。
 うつ病を引き起こす思考パターンとして「二分割思考」が指摘されております。主に仕事面での発想ですが、「100点でなければ0点」と「全か無か」のような発想を「二分割思考」と言うそうです。「7、8割なら合格点」とする中間的な考え方を許さない、高いクオリティを追求する完璧主義です。これを解消して、100%に及ばないところに落とし所を作る発想は肩の力を抜いて、気持ちに余裕が生まれます。日常生活における思考パターンの中で自分に「二分割思考」があるかどうかを見つめ直すところがスタートラインです。

3.明るい部屋で過ごし、なるべく外出して太陽光に浴びる

 国際医療福祉大学大学院の 和田 秀樹 教授 のご意見です。うつ病には冬季に発症する「冬季うつ病」があり、日照時間が減少することが影響していると考えられています。「冬季うつ病」には「高照度光療法」なる治療法があり、光を浴びることで体の状態を整えるものです。睡眠障害にも光療法は用いられます。
 日本に比べて欧米ではうつ病の罹患率が高く、その原因として 和田 教授は、家屋における部屋が薄暗いことを要素に挙げております。日本では南向きの家が好まれますが、欧米ではどちらかというと敬遠される傾向があります。欧米の室内は間接照明が多く薄暗い状態が好まれます。
 光が少なく薄暗いところでずっと過ごしていれば気分が沈んでしまう人もいる、と言うのが教授に発想です。うつ病予防として、明るい部屋で過ごし、なるべく外出して太陽光を浴びる生活を心がける、とされております。


◇ あとがき

 同級生 外科医の訃報に触れ、中年期のうつ病に向き合う機会を得ました。彼にうつ病が発症した原因は解りませんし、自分にもいつか降りかかって来るかも知れないと思いますが、今回の勉強で、ある程度は予防できるような気がしております。遅まきながら、大学同級生の彼の冥福を心よりお祈りいたします。
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