アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のヘミシンク体験とスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

大人の発達障害


 仕事柄、精神的ストレスなどの心因性の問題が消化器症状として現れる患者にしばしば接します。はっきりと胃十二指腸潰瘍や過敏性腸症候群などの疾病と言うかたちである事も、胃腸炎や胃もたれのようなものな漠然としたものであることもあります。そうした患者たち、とりわけ20〜30代の若者の中に、よく話を聞くと、どう言うわけか、周囲とのコミュニケーションが上手に取れない、健全な人間関係を作れない、仕事に打ち込めない、などの元々の人格的異常が関与しているケースがあります。ここでは、その代表的な病態として、最近、よく話題に挙がる「大人の発達障害」について、その原因、病態、診断と治療など、様々なページから拾って来ましたのでご紹介いたします。


◇ はじめに

 大人の発達障害は脳機能障害の一種です。先天的な異常であるため2, 3歳頃より特性が出始めるとされますが、知的障害を伴わない場合は見過ごされ易く、学童期から思春期にかけて集団生活への不適応が明らかになります。それでも、学校の成績に問題がなければ、「ちょっとずれている」、「天然ボケ」、「空気読めない」などと言われる程度に留まり、発達障害として認知されないことがほとんどです。
 ところが、社会に出ると困難さが一気に表面化します。社会人になると、周囲の人間は友達やクラスメートばかりではなくなります。多くの人間関係が仕事を共にする事務的なものであり、仕事を通じて信頼感や共感を得る存在となります。社会に出ると、世の中には「こんなことは言われなくとも解るはず」という暗黙の了解や大人のルールが数多くあって、そうした目に見えない常識を理解しにくいのが発達障害の特徴の一つですので、主として職場における集団の中で孤立したり、対人関係がうまくいかないことがしばしばとなります。私生活においても、異性と交際できない、友達がいない、注意力・集中力がない、そんな人間です。
 さらには、発達障害の人は他の人とコミュニケーションが上手にできません。視野が狭く、己の価値観が絶対ですし、一方で集中関心を保つことも平静な心でいるのも苦手ですから、これらに伴う、社会生活における様々な困難に直面する人であります。
 誰もが身近な存在に、もしかしてあの人がそうかも?、と思うことがある、病気ではないようで実は深刻な病態が「大人の発達障害」にあります。


◇ 大人の発達障害の概念/分類/疫学

 大人の発達障害の概念と簡単な分類、疫学をご紹介いたします。

1.子供の「発達障害」とは別のものとしての扱い

 ただ単に「発達障害(Developmental disability, DD)」と言うと、子供が、遺伝的素因、胎児期や出生児の状態、感染症、環境因子ななどにより、発達の過程において障害が生じ、肉体的、精神的な不具合が生ずる病態が含まれて来ますが、ここでは主として成人になってから発症するもののみを取り上げますので、「大人の発達障害」と明記する事で別のものとして扱ってまいります。

2.大人の発達障害の概念

 大人の発達障害は、発達の遅れと言う意味ではなく、脳の認知機能の障害のために、他人とコミュニケーションをとったり、暗黙のルールを守ったり、集中関心を保ったり、ミスや抜け漏れなく社会生活を送る事ができない、社会不適応を起こす状態であります。認知機能とは、目や耳などの感覚器官から入って来た情報を記憶と照らし合わせて、自分の取るべき行動を判断するまでの一連の処理能力を言いますが、大人の発達障害では、この認知機能に不具合が生じており、ある種の情報は的確に処理できるのに、ある種の情報にはうまく対応できない、処理能力に偏りが見られるのが特徴です。

3.大人の発達障害の分類と疫学

 大人の発達障害は以下に分類され、それぞれの発生頻度を%で示します。

 ○ 自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder, ASD)1.5〜2.6 %
  ・知的障害を伴う自閉症(Autism、カナータイプ)
  ・高機能自閉症(high functioning autism, HFA)
  ・アスペルガー症候群(Asperger syndrome, AS)
 ○ 注意欠如多動性障害(Attention deficit hyperactivity disorder, ADHD)5.0〜11.0 %
 ○ 学習障害(Learning disorder, LD)3.2〜4.5 %

 続いて、個々の発達障害について、病態、症状をご説明いたします。


◇ 自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder, ASD)

1.自閉症スペクトラムの概念の始まり

 「自閉症」と言う言葉は1943年、米国の精神科医 レオ・カナー 氏の論文で初めて使われました。ここでは、社会性や言語発達能力に重い障害が見られる子供たちを「早期幼児自閉症」として、知的障害、精神発達遅滞を伴うものと扱われておりました。その1年後、オーストラリアの小児科医 ハンス・アスペルガー 氏が「自閉的精神病質」と題した論文で、カナー 氏の症例と共通する特徴を持ちながら、言語発達の遅れや知的障害が見られない病態を報告しました。あまり注目を集めることはありませんでしたが、これが「アスペルガー症候群」の始まりでありました。
 1981年、英国の児童精神科医 ローナ・ウィング 氏は、カナー 氏が報告した症例とアスペルガー 氏の症例は本質は同じと考えました。彼は言語能力や知的レベルで病態を分けるのではなく、自閉症とアスペルガー症候群、その周辺にある自閉性障害すべてを含めて「自閉症スペクトラム」と呼ぶことを提唱しました。「スペクトラム」とは「連続性」と言う意味であり、病態の横の繋がりを指します。

2.自閉症スペクトラムの「三つ組の障害」

 ウィング 氏は自閉症スペクトラムの特徴として以下の「三つ組の障害」を提唱しております。それぞれの障害は個々に解説して参りますが、この3つの障害が現れている場合に自閉症スペクトラムと診断されます。

【三つ組の障害】
 ・社会性の障害:他人とうまく交流できない
 ・コミュニケーションの障害:言葉や表現を用いた意思表示ができない
 ・想像力の障害:想像力が乏しく、独特のこだわりがあり

3.自閉症スペクトラムの3病態とその位置付け

 自閉症スペクトラムには、上述の如く、知的障害を伴う(古典的)自閉症(Autism、カナータイプ)、高機能自閉症(high functioning autism, HFA)、アスペルガー症候群(Asperger syndrome, AS)に分類され、知的能力やコミュニケーション能力が低いレベルから高いレベルまで幅が広く、これらは、スペクトラム、連続した病態であると考えられております。

 ・知的障害を伴う(古典的)自閉症(カナータイプ):言語・知的発達に遅延あり
 ・高機能自閉症:乳幼児期に言語発達はあるが成長とともに問題は目立たなくなる
 ・アスペルガー症候群:言語・知的発達に遅延はないが言葉の使い方が特徴的

自閉症スペクトラムの概念 図

4.社会性の障害

 自閉症スペクトラムの最も特徴的な症状が社会性の障害であり、それはそのまま対人関係を作るのを難しくさせます。具体的は病態を箇条書きに説明いたします。

1) 他人に対する思いやり・配慮の欠如

 対人関係において、相手の気持ちを汲み取り、場の雰囲気にふさわしい言葉を投げかけることで良好な人間関係を作り、少なくとも不快感や敵対心を持たれないようにするのが人間として正常な対応で、こうした対人関係の能力を「社会性(ソーシャリティ)」と言います。自閉症スペクトラムの人にはその能力はありません。状況がどうであれ、相手が誰であろうと意に介さず、常に自分中心、自分の思う通り、自分にプラスになることしか考えません。これでは友達はできませんが、友達ができないことを寂しいとも思いません。

2)マナーやルールを理解できない

 犯罪に繋がるような大きな法律は別としても、人間社会にはマナーや暗黙のルール、集団における小さな取り決めがあります。これを理解できない、守れないのが自閉症スペクトラムの人です。例えば女性の年齢や容姿についての言動や、学歴、家柄による差別発言など、人間社会では通用しないマナーからの逸脱があります。相手との距離感が掴めないこともあり、会話において、過度に大声をあげたり、逆に目線を合わせられないのも自閉症スペクトラムの人独特のマナーです。
 ルールや取り決めについては、刑法や交通法規に及ぶ単純なものまで社会的なものを守る知識はありますが、明文化されていないルールを守ることはできません。予定表にすでに書かれた他人の予定を無視して自分の予定を押し通したり、小さな社会において皆で決めたルールを守れません。嘘をつくのは日常茶飯事ですし、人間として当たり前な立ち振る舞いができずに、信じられない行動をとります。集団の中にいても、自分の世界に浸り、周りに関心を示さない、周りに従わないとも言えます。

3)他人に過剰に気を使うタイプも

 自閉症スペクトラムの人は自己本位やマイペースと思われがちですが、逆に周囲に対して必要以上に気を使うタイプもいて、これもある意味では自己本位でマイペースと言えます。若いときより、「人の気持ちが解らない」、「空気が読めない」と言われ続けた結果、常に人から嫌われるのではないか?、と言う怯えがあって、たった数分の遅刻など小さなミスに対して何度も謝罪したり、必要以上に丁寧な言葉を発したりします。

自閉症 社会性の欠如の図

5.コミュニケーションの障害

 自閉症スペクトラム内でも言語発達能力の高低はありますが、共通しているのは「他人と共感したり、意思疎通を図ることが困難なため、正常な対人関係を築きにくい」と言う点で、これをコミュニケーションの障害と言います。

1)独特な言葉の理解の仕方とイントネーション

 相手の気持ちを察することができないため、言葉と言葉のキャッチボールにはなりません。一方的な会話は独りよがりで、また抑揚がなく無表情、身振り手振りもないため不自然な話し方になります。

2)言外の意味が通じない

 社交辞令や皮肉など、言外の意味、微妙なニュアンスを理解できないため、他人の言葉をストレートに受け止める、間に受けることがしばしばで、それに伴うトラブル、空気読めないが後を絶えません。

コミュニケーション障害

6.想像力の障害

 自閉症スペクトラムの人は、想像力の障害があり、柔軟な発想を持つことができず、また特定のものに対する独特のこだわりがあるため、それに伴う諸症状が見られます。

1)限定反復的行動

 起床から食事、出勤、退社、就寝まで時間をきっちりと決めて、仕事も一定の手順に頑固なまでに拘ります。物事をシステム化することに強い安心感を抱き、それを日々実践しようとします。

2)急な変更に柔軟な対応ができない

 予定通りに行かないことが生ずると不安や恐怖に陥り、ひどく混乱した状態となります。これは、物事の流れを読んだり、この先どうなるかと言ったことを想像する能力に欠けるからで、予定外のことが起こると柔軟に対応することができないのです。

3)特定なものに対する拘り

 日常の限定反復的行動は、意識の持って行き先をも限定させます。狭い興味の対象に執着して、その興味を長い間持続します。そうすることで安心感を得ると考えられており、凝り固まった拘りが周囲に害を及ぼす場合はしばしばです。一方、独特の強い興味は並外れた集中力を生むこともあり、芸術や研究分野で大きな仕事をなすこともあります。

4)変化に富むものが苦手、変化のないものが好き

 想像力の障害がある自閉症スペクトラムの人は、変化をすごく嫌うため、人の気持ちの変化にも不安を覚えることが多く、ロボットなどの機械や心変わりしない動物を好む傾向にあります。

7.周囲への迷惑が解らない

 自閉症スペクトラムは、他者の考えや心情をくみ取ることができない、社会性の障害、コミュニケーションの障害があるため、相手にどう思われているかと言うことに気が回りません。周囲への迷惑を「わからないからやってしまう」と言う状態です。

自閉症スペクトラム 想像力の障害 図


◇ 注意欠如多動性障害(Attention deficit hyperactivity disorder, ADHD)

 成人期にまで残りやすい大人の発達障害に「注意欠如多動性障害(ADHD)」があります。読んで字のごとくの性格で、一言で言えば「落ち着きがない」状態です。

1.注意欠如多動性障害の3つの特性

 注意欠如多動性障害には3つの大きな特性があります。

 ・多動性(転勤性):気が散りやすく、何かをやりかけのまま別のものに夢中になる
 ・衝動性:外界の出来事に心が動かされやすく、カットなって怒鳴ったりキレたりする
 ・不注意:ミスや物忘れが多く、整理整頓ができない

2.感度が高くトレンドに敏感

 注意欠如多動性障害の人が、集中力が持続しないのは、刺激に敏感で、新しいものに接することに満足する心理状態にあるからです。自閉症スペクトラムの人が興味の対象が限定的で「狭く深い知識を持つタイプ」であるのに対し、注意欠如多動性障害の人は様々な分野に渡り「広く浅い知識を持つタイプ」と言えます。

3.周囲への迷惑を理解

 自閉症スペクトラムと注意欠如多動性障害の大きな違いに、自分の行う周囲への迷惑への理解があります。自閉症スペクトラムではその認識が欠落していたのに対し、注意欠如多動性障害の人は自分の衝動的行動が周囲に迷惑をかけ、不快な思いをさせることを理解できます。自閉症スペクトラムが周囲への迷惑を「わからないからやってしまう」のに対して、注意欠如多動性障害は「いけないこととわかっていながらやってしまう」と言うことです。

4.自閉症スペクトラムとの合併

 自閉症スペクトラムと注意欠如多動性障害では、診断基準や医学的定義から見て別の障害のように見えますが、一人で両方を合併するケースは少なくありません。自閉症スペクトラムの特性を持つ人が、不注意や衝動性も併せ持ち、注意欠如多動性障害の診断をも満たすケースは少なくないとのことです。ある時は自閉症スペクトラムの特性が出て、ある時は注意欠如多動性障害の症状が発言する、当然のごとく、生きにくさは強く、治療に難渋するとされます。

注意欠如多動性障害 症状


◇ 学習障害(Learning disorder, LD)

 発達障害には「学習障害」が含まれます。これは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないものの、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算する」又は「推論する」能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものであります。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではありません。また、単独で出現するケースもありますが、自閉症スペクトラムや注意欠如多動性障害と合併する症例の方が多く見られます。

学習障害 図


◇ 大人の発達障害の原因論

 なぜ発達障害になるのか、その原因論についてはまだ完全には解明されていません。脳のいくつかの部位が、何らかの原因で発達を阻害された結果と考えられております。

1.認知機能の偏りが主たる病態

 脳は感覚器官から入ってきた様々な情報を受容(入力)して記憶と照合し、組み合わせたり統合したりして、それに応じて行動(出力)します。この、受容(入力)から行動(出力)までのプロセスを「認知」と言います。自閉症スペクトラムや注意欠如多動性障害の発達障害では、この認知機能に偏りが主たる病態と考えられております。

2.完全に否定された親の愛情不足や甘やかし

 人と交わることができない自閉症スペクトラムの原因として親の愛情の不足が原因と言われた時期がありました。同様に、注意欠如多動性障害の場合はしつけが悪い、甘やかしが原因と、総じて、発達障害の原因が親の接し方、育て方に問題あるとされました。現在では、発達障害は生れながらの脳の特性によるものであり、先天的要因が大きいと考えられており、親の育て方は完全に否定されております。

3.遺伝性

 特に自閉症スペクトラムについては遺伝子レベルの研究が進んでいます。それによると遺伝子ですべてが説明できるわけではないが、大きく遺伝要因が関与していることがわかってきました。
 発達障害に関連する遺伝子は200とも400ともいわれますが、発症までのメカニズムはまだわかっていません。例えば自閉症の兄弟がいる場合、もう一人も自閉症である場合は発症率が高まるという研究結果が出ています。遺伝子が異なる二卵性双生児で兄弟二人共に発達障害である可能性は5〜109%であるのに対し、遺伝子が全く同じ一卵性双生児では75〜85%でありますが、100%ではありません。このことは、遺伝性の関与は大いに考えられるが、遺伝性のみでは説明がつかないと言えます。

4.環境因子

 発達障害の原因として環境要因があげられます。親の年齢、出産時の合併症、妊娠時の食事、汚染からの影響、環境ホルモンなどが考えられています。今後、遺伝要因と環境要因がどのように絡んで発症に至るのかが徐々に解明されていくと思われます。

5.その他

 発達障害の原因に、海外では予防接種やワクチンを原因とする説や、ウイルスやプリオンによる感染も可能性として考えられておりますが、今までのところこれらは否定的であります。


◇ 大人の発達障害の診断

 発達障害の診断にはアメリカ精神医学会の精神疾患の分類と診断のマニュアルと基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM)が用いられております。2013年5月、自閉症スペクトラムに関するものが第4版から5版へと更新されましたのでここにご紹介いたします。その他、付随して行われるウェクスラー式成人知能検査(WAIS-III)やIQを構成する各要素の分析などは他に譲ります。

1.DSM―5による自閉症スペクトラム障害の診断基準(表1)

A.現在または履歴により、以下のようなことが明らかにされ、多くの状況を通した社会的コミュニケーションと社会的相互作用の持続的な障害(例示であり網羅的なものではない)。

1)異常な社会的アプローチと正常な噛み合った会話の失敗から、関心・感情・感動の縮小した共有、社会的相互作用の生起や反応の失敗までの幅のある社会―情緒的相互性の障害。
2)統合性の低い言語的・非言語的コミュニケーションから、アイコンタクトや身体言語の異常性、ジェスチャーの理解や使用の障害、顔の表情や非言語的コミュニケーションの全体的欠如まで幅のある、社会的相互作用に使われる非言語的コミュニケーション行動の障害。
3)様々な社会的状況に合わせた行動調整の困難、想像力に富んだ遊びの共有ないし友人を作ることの困難、仲間への関心の欠如まで幅をもった、関係 性の発達・維持・理解の障害。

※重篤度は社会的コミュニケーション障害や固定的・反復的行動パターンに基 づく(表2参照)。

B.現在あるいは履歴において以下の事項の内少なくとも 2つにより示される、行動・関心・活動における固定的・反復的なパターン(例は例示である網羅的なものではない)。

1)型にはまったもしくは反復的な動作、ものの使用ないし会話(例えば単純な運動ハパターン、おもちゃの配列、ものの押し方、エコラリア echolalia、特異なフレーズ)。
2)同一性へのこだわり、決まったやり方への柔軟性を欠いた固執、儀式化した言語的・非言語的行動パターン(例えば小さな変化への極端な苦痛、変化への困難、固定的な思考パターン、挨拶儀式、同じ道を採ることへの要求、ないし毎日同じものを食べる)。
3)強度や焦点が異常なかなり限定された固定的関心(例えば通常でないものへの強い固着ないし占有、極点に制限され根気のいる関心)。
4)感覚刺激への過剰反応もしくは鈍感さないし環境の感覚的側面への通常でない関心(例えば苦痛/気温への識別の無さ、特定の音や触感への嫌悪反応、過敏な臭覚、ものの感触、光や運動への視覚的な魅了)。

※重篤度は社会的コミュニケーション障害や固定的・反復的行動パターンに基 づく(表2参照)。

C.症状は発達初期に存在している(しかし社会的要求が制限された能力を超えるまでは顕現しないかもしれないし,後の人生で学習されたストラテジーにより隠されてしまっているかもしれない)。

D.症状は、現在の機能で社会的、職業的、あるいは他の重要な領域において臨床的に重要な障害を引き起こす。

E.これらの障害は、知的障害(知的発達障害)ないし全体的な発達遅滞によってよりよく説明されない 知的障害と自閉症スペクトラム障害はしばしば併存する。自閉症と知的障害の併存診断をするためには,社会的コミュニケ-ションが一般的発達水準から期待されるものより低くなければならない。

2.DSM―5による自閉症スペクトラム障害の重篤度(表2)

LEVEL 3:非常に本質的な支援が必要

【社会的コミュニケーション】
 言語的・非言語的な社会的コミュニケーション・スキルにおける重篤な障害が、機能の重篤な障害、社会的相互作用の非常に制限された生起、他者からの社会的交渉への反応の乏しさを引き起こしている。例えば、相互作用を引き起こすのが希な知的な会話の言葉が少ない人は、もっぱらニーズに合致する異常なアプローチを行い、非常に直接的な社会的アプローチにのみ反応する。

【固定的・反復的行動】
 柔軟性のない行動、変化への対応の極端な困難、もしくは他の固定的/反復的行動がすべての領域の機能に著しく干渉する。焦点や行為の変化が大きく苦痛/困難。

LEVEL 2:本質的な支援が必要

【社会的コミュニケーション】
 言語的・非言語的な社会的コミュニケーション・スキルにおける顕著な障害;決まった場所でのサポートでさえ明白な社会的障害;社会的相互作用の制限された生起;他者から社会的交渉への縮小したもしくは異常な反応。例えば、単文のみを話し、その相互作用が狭い空間的な関心に制限され、著しく奇妙な非言語的なコミュニケーションをする人。

【固定的・反復的行動】
 柔軟性のない行動、変化への対応の困難、もしくは他の固定的/反復的行動が通常の観察者にしばしば明確に出現し、様々なコンテキストで機能に干渉する。焦点や行為の変化が苦痛/困難。

LEVEL 1:支援が必要

【社会的コミュニケーション】
 決まった場所でのサポートがないと、社会的コミュニケーションの障害が著しい障害を生じる。社会的相互作用を生じることの困難と他者の社会的な交渉への非定型的ないし失敗した反応の明らかな例がある。社会的な相互作用への関心が低いかもしれない。例えば、全文で話すことができ、コミュニケーションに係わるが、その会話はあちこちに飛び通じない。友人を作ろうとする試みは奇妙で典型的に失敗する。

【固定的・反復的行動】
 柔軟性のない行動が、1つあるいはそれ以上のコンテキストで機能に重大な干渉を生じる。活動の切り替えの困難。組織化や計画性の問題が独立性を妨害する。


◇ 大人の発達障害に類似した精神疾患

 大人の発達障害は、統合失調症などの精神疾患を合併していること、また精神疾患との鑑別が困難であることがしばしばであり、発達障害そのものに対する学問の歴史が浅いこともあって、精神疾患を合併する発達障害や精神疾患に類似したケースにおいて、精神疾患に対する治療のみが行われることがよくあります。ここでは、大人の発達障害に類似した精神疾患に触れます。

1.統合失調症

 以前は「精神分裂病」と言われた病態で、代表的な精神疾患です。考えがまとまらず、通称「言葉のサラダ」、支離滅裂なことを話します。幻聴を感じることが多く、自分の考えや行動が他人に操られている感覚を持ちます。慢性期になりますと、感情が乏しい「感情の平板化」、世間に無関心な「感情鈍麻」、引きこもって無為に過ごす「自閉(無為)」、意味なく笑う「空笑」、そして末期には「人格荒廃」となります。

2.強迫神経症

 自分の意に反して、不安あるいは不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられないのを「強迫観念」、無意味と解っていながら強迫観念に従って何度も同じことを繰り返して行ってしまうのを「強迫行為」と言います。手を何度も洗わなければ気が済まない「手洗い強迫」や、外出先で戸締りが気になって引き返す「確認強迫」などです。本人は強迫観念に囚われていることを自覚しており、しばしば自責の念を持ちます。自閉症スペクトラムの「限定・反復的行為」も強迫行為ではありますが、強迫観念はなく、また本人は強迫行為を気にしません。

3.心身症

 ストレスなどの「心因」が原因で身体に異常を来すのを「心身症」と言います。大人の発達障害の人は、コミュニケーション能力が低く対人関係を築けないため、感情を人に伝えられずに独りで悩みを抱えていることがあります。こうした際に、心身症の症状が発現するとされます。


◇ 大人の発達障害に対するケア

 大人の発達障害は、先天的な脳機能の障害であり特性でありますので、例えば色を見極めるのが困難な色盲や、聴神経に問題がある聴覚障害に薬物治療が無効なのと同じように、根治的な治療はありません。同時に、精神疾患ではありませんので、抗精神病薬は、一時的に症状を軽減することはあっても根本的な治療とは言えず、かえって薬の副作用から病態が悪化することが少なくありません。ここでは、「治療」と言うよりも、「ケア」と言うかたちで対処法についていくつかご紹介いたします。

1.診療はあくまでも精神科

 大人の発達障害は精神疾患とは違うと申しましたが、やはり診療の場はあくまでも精神科であります。ただ、上述のごとく大人の発達障害に類似した精神疾患がありますので、誤った診療を受ける可能性はあります。統合失調症と診断されて精神科に長期入院していた患者が実は自閉症スペクトラムであったと判明したと言う実例が少なくありません。
 大人の発達障害に対応するのは精神科であると言うのは間違いありません。しかし、診療を委ねる精神科の選択が重要であります。病院に受診する前に、自分の(あるいは家族の)病態が発達障害かも知れないと言う意識を持って、専門の病院を選択する方が良いでしょう。

2.日記療法

 大人の発達障害の人は、人間関係や職場における失敗から、生きにくさを感じています。でも、それがなぜなのかはわからないのです。失敗の自覚はあるのですから、そうした出来事が起こる都度、日記を書いて文章として残すことが勧められています。「日記療法」を行うことで、同じ失敗があった時に自分自身を見つめなおし、かつ、次回に繰り返さない姿勢に繋がります。社会性やコミュニケーション能力を改善しうるのです。

3.日常生活の工夫

 アスペルガー症候群に代表される、大人の発達障害の人は、知能は正常なことが多いですから、診断を受けたところで、日常生活を変えることで工夫することは必ずできます。以下に列挙したことで、大人の発達障害の特性が現れづらくなると言われております。

1)丁寧過ぎず乱暴過ぎない言葉使いを心がける
2)社会人として必要なマナーを身につける
3)他人と接する時には距離感に注意する
4)服装に注意を払い、清潔感を大切にする
5)身の回りを整理整頓して、メモを取ることで忘れ物をなくす

4.職業の選び方

 社会性やコミュニケーションの障害から仕事に苦労することが多い大人の発達障害ですが、研究や芸術などで、思わぬ大成功を収めることも知られています。人間関係に難渋するのですから、営業などの人と接する仕事よりも、独りでコツコツと創造する仕事が良いとされます。また、大人の発達障害では、得意分野と不得意分野がはっきりと分かれているとされます。仕事を探すにあたり、自分お特性を見つめ直し、自分の得意分野、興味があることを見極めることから始めると良いとされます。


◇ 大人の発達障害に対する周囲のサポート

 大人の発達障害があっても、ある程度は周囲のサポートより問題なく生活が可能です。なかなか、職場に己の障害を公表してサポートを期待するのにはいくつかのハードルはあろうかと思いますが、いくつか理想的な周囲のサポートをご紹介します。

1.「発達障害 = 個性」

 大人の発達障害はそれ自体が人間としての「個性」であるとの発想がサポートの第一歩とされます。人とは異なる行動特性や不得意なことなど、マイナスの側面に過剰に反応することも、激しく責めるのでもなく、そうしたものを「特性」と捉えることで暖かく接すると同時に、問題点を一緒に解決する姿勢を見せることが第一のサポートであります。

2.指示や注意は簡潔明瞭に

 大人の発達障害の人は言外の意味をくむことが苦手ですので、仕事をお願いする時には、簡潔で明瞭な言葉で伝えてあげるのが必要です。例えば、ミスを犯したとしても、そのことをなじり、怒るよりも、ミスの内容を具体的に知らせ、どうすれば良かったかを、やはり簡潔明瞭に伝えることが大切です。

3.雑然・煩雑な環境を簡潔明瞭な環境に

 指示や注意と同様、オフィスの棚や机、システムなど、職場環境の雑然・煩雑さを是正して、大人の発達障害の人にとって簡潔明瞭な職場環境を提供してあげることも周囲のサポートに繋がります。


◇ あとがき

 大人の発達障害を勉強して、思い返せば多くの過去の知り合いがこの障害を有していたのではないか?、自分自身にも当てはまるのではないか?、とふと思いました。と同時に、周囲から浮いて、他人には理解できない行動をとり、自分自身も生きにくさを感じている人々でありますが、果たして彼らが病気なのか、本当に障害として良いのかいささか疑問にも思いました。
 空気が読めない、社会性が無い、コミュニケーションの障害と、ネガティブな、あるいはマイナス面に着目するからその原因論や病態が議論されるのであります。世の中には、空気を鋭く読んで社会性に富む、コミュニケーション能力に長けた人物はいますが、そうした人間についての分析はなされていません。もしかしたら、学力や運動能力と同様に、この手の能力にも優劣に連続性があって、「正常」と呼ばれる領域は無い、幅広い人間の個性あるいは性格の一部を拾い上げているだけなのかも知れないと思いました。
 現代社会において、「大人の発達障害」と呼ばれる人々が生きづらいのは確かでありますが、それを病気とせずに、いわゆる「個性」として受け止める姿勢が求められます。


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