アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のヘミシンク体験とスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

睡眠薬 小辞典


 ある日の外来、胆道癌術後に外来化学療法をやっている患者から、現在、内服中の睡眠薬ではあまりよく眠れないとの訴えがありました。具体的には、夜の10時過ぎにレンドルミンを服用してきたものの、寝つきが今ひとつで、しかも明け方に目が覚めて、翌日には薬の作用が残っているような頭が重い感じがするとのことでした。
 中年以降の患者からのこうした訴えは少なくないのですが、果たして現在の内服薬よりも強力なものを処方するか、その逆かは難しいところです。まさか、抗癌剤治療をやっている受け持ちの患者を、不眠と言う理由だけで精神科なりに紹介するのは気が引けますので、「まず1週間ずつ薬を変えて変化を見てみましょう」とお話して、マイスリーに処方を変えてみました。その根拠は極めて薄く、短時間作用薬から超短時間に変えることで、切れ味鋭く速やかに入眠いただき、速い血中半減期で翌日の頭重感を避けることに主眼をおきました。
 1週間したところで再来に来た患者、「あれはすごく良かったです!」と明るい表情でありました。明け方の目覚めはまだあるものの、それはそれほど苦痛にはならず、何より入眠が速やかで翌日に残らないことを喜んでいました。ホッと胸をなでおろし、「この手は使えるな!」と実感しましたが、外科医が出す睡眠薬なんてそんなものです。

 そうしたことがあって、せっかくの機会なので、睡眠薬について勉強し、ここにまとめておこうかと思いました。まずは薬剤の組成と作用機序による分類をご紹介し、次いで、ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬および非ベンゾジアゼピン系睡眠薬について、最高血中濃度到達時間(T max、時間)、血中消失半減期(T 1/2、時間)に基づき作用時間毎に詳しく解説して参ります。


◇ 睡眠薬の分類

1.バルビツール(Barbiturate)酸系睡眠薬

 バルビツール(Barbiturate)酸系睡眠薬は、1950年代に使われ始めた最古の睡眠薬とされますが、現在では注射薬の「フェノバール」として病院で鎮静目的に使用されるくらいで、睡眠薬としてはほとんど使用されておりません。バルビツールは、中枢神経系における神経伝達物質の中で抑制アミノ酸であるγアミノ酪酸(GABA)が結合するGABA受容体に結合することにより神経遮断を引き起こすとされています。効果は強いのですが、呼吸抑制や重篤な不整脈などの副作用が認められ、また常用することで効果が薄くなる「耐性」、常用により服用しないではいられず、離脱症状も伴う「依存性」が見られます。飲み薬としては、「ベゲタミン」、「ラボナ」、「イソミタール」、「バルビタール」(いずれも商品名)がそれですが、極力、処方すべきではないとされております。

220px-イソミタール


2.ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬

 ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)作動性睡眠薬は、1960年代より登場し、バルビツールに取って代わり、現在の主流である睡眠薬、抗不安薬です。バルビツールと同様、中枢神経のGABA受容体に結合することにより神経遮断を引き起こしますが、薬剤によって作用時間が異なり、短時間型、中間型、長時間型の作用に分類されております。短時間と中間型作用のベンゾジアゼピンは不眠症の治療に望まし9、長時間型は、不安の治療のために推奨されております。耐性、依存性、連用による離脱症状が指摘されており、長期の持続投与では慎重を要すとされます。
 作用時間が短い順に、「ハルシオン」、「デパス」、「レンドルミン」、「リスミー」、「エパミール」、「ロラメット」、「ロヒプノール」、「サイレース」、「ユールジン」、「ベンザリン」、「ネルボン」、「ドラール」、「ダルメート」、「ソメリン」が商品化されております。


3.非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

 非ベンゾジアゼピン(nonbenzodiazepine)系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン様(benzodiazepine-like)薬とも呼ばれ、ベンゾジアゼピン系に似ていないか全く別の化学構造にもかかわらず、薬理学的にベンゾジアゼピン系に類似した作用を有する薬剤です。すなわち、GABAA受容体の正のアロステリック調節因子であり、ベンゾジアゼピン系薬と同様、ベンゾジアゼピン部位の受容体複合体に結合し活性化することによって作用を発揮します。ふらつきや筋弛緩作用が少なく、耐性や依存性についてもベンゾジアゼピン系薬よりも軽度であり、安全性が高いとされます。
 「マイスリー」、「アモバン」、「ルネスタ」がこの範疇であり、いずれも超短時間作用型に分類され、最高血中濃度到達時間は0.7-1.5時間程度で、血中消失半減期は2-5時間とされます。


4.メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン:ロゼレム(武田)

 動物の脳は夜になると、視床下部と言う部位からメラトニン(melatonin)と言うホルモンが分泌され、これが視交叉上核にあるメラトニン受容体に作用することで自然な眠気を感じ、眠りにつきやすい体制が作られます。このメカニズムを利用したのがメラトニン受容体作動薬です。他の睡眠薬は、薬の力で強制的に眠らせるものですが、メラトニン受容体作動薬は、自然に近い機序で眠りにつかせることができるのが最大の特徴です。自然な眠気を後押ししてくれる薬剤なので、 大きな副作用はなく、耐性や依存性もない、安全性が高い睡眠薬ですが、その分、作用も強くはありません。

【効能・効果】
 不眠症における入眠困難の改善

【最高血中濃度到達時間 T max】
 0.75 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 0.94 h

ロゼレム


5.オレキシン受容体拮抗薬 スポレキサント:ベルソムラ(MSD)

 オレキシン(orexin)は、1998年に発見された神経ペプチドで、ヒポクレチン (hypocretin) とも呼ばれます。視床下部外側野に存在する神経細胞が産生しているオレキシンは、食欲や報酬系に関わるほか、睡眠や覚醒を制御することが知られており、オレキシンをつくる神経細胞が消滅すると、ナルコレプシーという睡眠障害になります。オレキシン受容体拮抗薬はオレキシンのはたらきをブロックすることで脳の覚醒レベルを落とし、眠りに導く薬剤にです。ベンゾジアゼピン系と比べると効果はやや劣りますが、耐性、依存性はほとんどなく、日中の眠気の持ち越しが少ないという利点があります。

【効能・効果】
 不眠症

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1.5 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 10 h

ベルソムラ


◇ 超短時間作用型睡眠薬

1.ゾルビデム酒石酸塩:マイスリー(アステラス・アベンティス)

【効能・効果】
 不眠症(統合失調症および鬱病に伴う不眠症は除く)

【最高血中濃度到達時間 T max】
 0.7-0.9 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 2 h

マイスリー


2.トリアゾラム:ハルシオン(ファイザー)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1.2 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 2-4 h

ハルシオン


3.ゾビクロン:アモバン(アベンティス、日医工)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 0.75-1.17 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 4 h

アモバン


4.エスゾピクロン:ルネスタ(エーザイ)

【効能・効果】
 不眠症

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1-1.5 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 5 h

ルネスタ


◇ 短時間作用型睡眠薬

1.エチゾラム:デパス(田辺三菱、吉富)

【効能・効果】
 1)神経症における不安、緊張、抑うつ、神経衰弱症状、睡眠障害
 2)鬱病における不安、緊張、睡眠障害
 3)心身症における身体症候ならびに不安、緊張、抑うつ、睡眠障害
 4)統合失調症における睡眠障害
 5)次の疾患における不安、緊張、抑うつおよび筋緊張;頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛

【最高血中濃度到達時間 T max】
 3.3 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 6 h

デパス


2.ブロチゾラム:レンドルミン(日本ベーリンガー、インゲルハイム)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1-1.5 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 7 h

レンドルミン


3.リルマザホン塩酸塩:リスミー(塩野義)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 3 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 10 h

リスミー


4.ロルメタゼパム:エパミール(バイエル)、ロラメット(あすか製薬、武田)

【効能・効果】
 不眠症

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1-2 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 10 h

エパミール

ロラメット


◇ 中間作用型睡眠薬

1.フルニトラゼパム:ロヒプノール(中外)、サイレース(エーザイ)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1-2 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 24 h

ロヒプノール

サイレース


2.エスタゾラム:ユーロジン(武田)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 5 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 24 h

ユーロジン


3.ニトラゼパム:ベンザリン(塩野義)、ネルボン(第一三共)

【効能・効果】
 1)不眠症
 2)麻酔前投薬
 3)異型小発作群;点頭てんかん、ミオクロヌス発作、失立発作 等
 4)焦点性発作;焦点性痙攣発作、精神運動発作、自律神経発作 等

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1.6-2 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 28 h

ベンザリン

ネルボン


◇ 長時間作用型睡眠薬

1.クアゼパム:ドラール(田辺三菱、久光、吉富)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 3.42 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 36 h

ドラール


2.フルラゼパム塩酸塩:ダルメート(共和)

【効能・効果】
 不眠症、麻酔前投薬

【最高血中濃度到達時間 T max】
 1 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 65 h

ダルメート


3.ハロキサゾラム:ソメリン(第一三共)

【効能・効果】
 不眠症

【最高血中濃度到達時間 T max】
 4 h

【血中消失半減期 T 1/2】
 85 h

ソメリン


◇ 各種睡眠薬の形状・作用時間 一覧

睡眠薬一覧


◇ あとがき

 文献、ネットから睡眠薬を列挙させていただきました。当たり前のことですが、薬剤によって、作用の効果発現までの時間、血中半減期にかなりの幅があることが分かります。患者の体質や生活習慣により効果が不定であり、薬剤の選定には試行錯誤が必要であることは言うまでもありませんが、大原則は、「眠れないから睡眠薬!」と安易な処方から依存してしまうのではなく、まずは薬に頼ることなく症状改善を目指すこと、作用の軽い薬剤から開始することでありますね。

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