アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

二人のアスリートに観た「燃え尽き症候群」

 先週の末、サッカー元日本代表MF、奥大介容疑者(37)の逮捕が報道されました。約8年間にわたり、妻である女優の佐伯日菜子さん(36)に対してドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)を繰り返し、「今から殺しに行く!」との脅迫に対して警察に通報したものとのことです。私はこの報道を見聞きして、直感的に、華々しい過去を持つスポーツ選手の燃え尽き症候群だろうと思うと同時に、一昨年、2011年7月下旬(24日より行方不明、発見は27日)に自殺した伊良部秀輝投手を憶い出しました。この二人のアスリートに観た「燃え尽き症候群」を取り上げたいと思います。まずは以下、スポーツ報知などの奥大介容疑者に関する報道です。


◇ サッカー元日本代表MF 奥 大介 氏 DVの記事

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 日本代表MFとして活躍し、J1でも横浜Mの2連覇に貢献した好選手の逮捕にサッカー関係者は動揺を隠せなかった。横浜M在籍時の奥容疑者とプレーしたある選手は「後輩を食事に連れていくなど、面倒見が良い兄貴分だった。選手として悩みを聞いてもらったことがあり、すごく世話になった。こんなことになるとは」とショックを受けた様子だった。横浜Mの職員として接した関係者も「寝耳に水だ。お酒が好きで、アスリートというよりも豪快な天才肌の選手という感じ。ホームゲームでは夫人や娘が試合をよく見にきていたのを覚えている」と驚いていた。

奥大介

 2007年に横浜Cで引退した奥容疑者は、2011年10月から横浜Cの強化部長を務めたが「体調がすぐれない」という理由で、昨年12月にテクニカルアドバイザーに異動。今年1月末に契約満了で退団した。佐伯さんと親しい関係者によると、奥容疑者のDVが日常化したのは結婚から3年たった2005年ごろからだという。「お前なんか大した女優でもないくせに」「誰のおかげでメシが食えていると思っているんだ」などの暴言とともに、小学生の娘2人の前で暴行を加えたこともあったという。地方の田んぼ道を歩いているとき、いきなり奥容疑者が佐伯さんを田んぼへ突き飛ばしたところも友人らによって目撃されている。また、奥容疑者は「お前、浮気しているだろう」となどと言って、佐伯さんの携帯電話を壊したという。最近では娘が通う小学校に「子どもを出せ。お前ら嫁とグルで隠しているんだろう」と何度も電話をかけ続けたという。佐伯さんは「仕事をすれば文句をつけ、邪魔をされてしまう。この状態では仕事ができない」と周囲に悩みを打ち明けていた。佐伯さんは4日に戸塚署に被害届を提出したが、DVを受けた際の録音テープやけがの診断書も用意していた。
 奥容疑者は実家のある尼崎市で逮捕されたが、別居状態にはなっていないという。ある関係者は「(サッカーの)仕事がなくなり、精神的にも参ってしまっている奥を佐伯さんが介護するような状態になっていた」と証言した。16日に愛知県で予定されていた奥容疑者のトークイベントは、ゲストにトラブルがあったとして中止になった。

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 まだ警察の取り調べの段階ですので、憶測で物を言うのは控えるべきと思われますが、はっきり言えることは、奥大介容疑者は佐伯さんと言う夫人を心から憎んだり嫌ったりしていたわけではなく、どうにもならない情動が彼の中にあったのであろうと言うことです。2005年頃よりDVは始まり2007年に現役引退とのことですので、30歳を迎える直前のサッカー選手として下り坂に入ったところに端を発したのだろうと予測いたします。


◇ 伊良部 秀輝 投手の自殺

 故伊良部秀輝投手は、1987年のドラフト1位でロッテに入団、1993年より頭角を現し、最多勝、最多奪三振、最優秀防御率などのタイトルを獲得した後、1997年よりメジャーリーグ(ヤンキース、エクスポズ、レンジャース)で活躍、2003年には阪神で日本復帰、13勝をあげて優勝に貢献しましたが、2004年オフには戦力外となりました。2005年に引退表明後、ロサンゼルスにてうどん屋を経営したり、アメリカ独立リーグや日本の四国・九州アイランドリーグで現役復帰、2010年1月、二度目の引退をして、2011年7月、自宅にて首を吊った状態で死亡しているのが発見されました。
 故伊良部投手に関しては、亡くなる直前にノンフィクションライターの田崎健太氏がインタビューをしており、それが世の中に出た2週間後の訃報でありました。また、団野村氏の書籍も発表されており、併せてオグマナオト氏がレビューを掲載しておりますのでこれを引用いたします。

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『伊良部秀輝はわがままでも傲慢でもなかった
 ただ野球を愛しすぎたのだ』

 手元に1冊の「SPA!」がある。2011年7月19日号。捨てられずにずっと取ってあるのは、伊良部秀輝、人生最後のインタビューが載っているから。「伊良部秀輝、ロスの自宅で自殺」の報が流れたのは、その「SPA!」が発売された2週間後のことだった。自殺の原因としてはどの新聞報道でも、「共同オーナーを務めていたうどん店の経営不振」、「家族との不仲、離婚問題」、「球界へ復帰したくても受け入れてくれる場所がない孤独」、という3点が挙げられていたが、これを真っ向から否定する書籍が登場した。

『伊良部秀輝 ラストインタビュー』 田崎 健太 著
『伊良部秀輝 野球を愛しすぎた男の真実』 団 野村 著

伊良部

 上梓したのは伊良部秀輝の代理人を務めた団野村。この本の冒頭で、うどん店は黒字だったが店のリース契約が切れたから閉店になったこと、離婚報道はデタラメで奥さんとも仲がよかったこと、そして今後の仕事についても講演や解説、野球教室などを計画し、来日の予定もあったことを記している。では、なぜ伊良部は自殺を選んでしまったのか。著者はこれまでの伊良部秀輝の野球人生、そして伊良部自身の野球哲学を振り返りながら、その背景を改めて考察する。

 伊良部秀輝、といえば最速158km/hの豪速球を武器に日米で活躍し、ヤンキース時代には日本人初のワールドリングを手にするなど、一時代を築いた投手だ。その一方で、ロッテ時代には広岡GM(当時)と何度も衝突を繰り返し、ヤンキース時代にはオーナーから「彼は太ったヒキガエルだ」と糾弾されるなど、「悪童」「わがまま」「傲慢」というイメージも強い。大阪のバーで店員を殴って逮捕されたことを覚えている方も多いだろう。その事件にしても、真相は別にあったと著者は綴る。曰く、支払いで提示したクレジットカードが15分過ぎても戻ってこなかったため、不振に思った伊良部が問いつめたところ店長が逃げようとしたので押さえつけた……むしろ伊良部の方がスキミングの被害者であり、事実、伊良部はその後、不起訴処分にもなっている。

《しかし、メディアはこうした事実をいっさい伝えなかった。(略)断言するが、ヒデキはわがままでも、自己中心的でも、傲慢でもない。そういうイメージはすべてメディアがつくりあげたもので、まったく事実ではない。それどころかヒデキは正反対の人間だった》

 本書では以降、伊良部がいかに繊細な男で、愚直に野球のことばかり考えていたかを、代理人として一番そばで見続けてきたからこその視点で明らかにしていく。メジャー志向になった経緯、ロッテ時代の先輩・牛島和彦に影響を受けた投球術やトレーニング方法、関節・筋肉の使い方まで含めた投球フォームへのこだわりなど専門的な記述も多い。一方で、イチロー・長谷川滋利との食事会において、3時間超二人を質問攻めにし、伊良部がトイレに立った際にイチローが「いつもどうやって話を切り上げるの?」と聞いてきたという、微笑ましいエピソードも登場する。豪速球のイメージが強い伊良部が実際にはとにかく研究熱心で、三振よりもどう打たれるかばかりを考えていたなど、これまでメディアで報じられていたイメージとは異なる面が多々描かれていく。中でも従来のイメージとのギャップを感じるのが、伊良部という男が抱えていた「恐怖心」だ。

《「このままでは、いずれ通用しなくなるのではないか。打たれるのではないか……」そういう強い恐怖心、おびえがヒデキの心のなかにはつねにあり、それが彼の研究心、向上心を駆り立てることになった(略)恐怖が、彼が野球を深く掘り下げるためのモチベーションになっていたのは間違いない》

 そして、恐怖心を乗り越えた先にある、野球でしか得ることができない「アドレナリン」こそが、伊良部が生きる上でのモチベーションになっていたと語る。

《アドレナリンの興奮と恍惚を知ってしまったアスリートにとっては、アドレナリンが湧いてこない状態はいわば “死んだも同然” なのではないだろうか》

 現役引退で喪失してしまったアドレナリンをどうやって取り戻せばいいのか、という伊良部の苦悩は、セカンドキャリアで失敗する例が多いアスリートの生き様を考える上でも示唆に富む事例であるだろう。
 著者である団野村は、代理人として野茂英雄・吉井理人・岩隈久志・ダルビッシュ有などのメジャー挑戦を支えてきた人物だ。本書の中でも、伊良部と野茂、伊良部とダルビッシュの比較論など、代理人ならではの客観的な評価軸が登場する。また、伊良部=わがまま、というイメージが決定的となった「メジャー移籍騒動」も、契約までの舞台裏においてロッテ、メジャー球団サイドとどんな口約束や事前交渉があり、反故にされたのかを実名も交え詳細に綴っていく。代理人でしか書けない強烈なコンテンツだ。
 しかし、本書の中で垣間見せるのは「代理人・団野村」の姿ばかりではない。団自身が元プロ野球選手だからこそ感じる一流アスリートへの憧憬、そして伊良部と同じ「ハーフ」という出自を持つからこその「自分は何者なのか」「自分のいるべき場所(国)はどこなのか」という悩みを自分語りとして綴る。
 同様に自分が真に輝ける場所を求め、アメリカに渡った伊良部。だが、冒頭で紹介した生前最後のインタビュー記事のタイトルが「やはり日本に帰りたい」だったのがなんとも皮肉である。いずれにせよ、日米の野球界に大きな爪痕を残した伊良部秀輝という人物の、メディアでは決して描かれることのない素顔を知る上で必読の書であるだろう。そんなメディアについて、伊良部自身が語っている言葉がある。最後に引用したい。(オグマナオト)

「野球のボールはコントロールできるけれど、メディアはコントロールできない」

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 上の文章で表現された「現役引退で喪失してしまったアドレナリンをどうやって取り戻せばいいのか?」、「セカンドキャリアで失敗する例が多いアスリートの生き様」と言う現象、奥大介容疑者はどうにもならない気持ちを暴力に訴えてしまい、故伊良部秀輝投手は自らの命を絶つこととなってしまった、これは燃え尽き症候群に他なりません。

 セカンドキャリアで失敗するアスリート


◇ 燃え尽き症候群

 燃え尽き症候群(Burnout Syndrome)とは、1970年代の米国で生まれた言葉とされ、一定の事象に対して献身的に努力した人間が、その活動が停止した場合、例えば引退、会社の倒産、リストラ、家族の不慮の死などに際して、それまでの人生最大の目標を終え、打ち込む物が何もなくなった状態から、慢性的で絶え間ないストレスが持続することにより、意欲を無くし、社会的に機能しなくなってしまう症状、一種の心因性(反応性)うつ病と説明されます。
 症状として、朝起きられない、会社または職場に行きたくない、アルコール多飲、イライラが募るなどから始まり、突然の辞職、無関心、過度の消費などにはけ口を見出したり、最後は仕事からの逃避、家庭生活の崩壊、対人関係の忌避、最悪の場合、自殺や犯罪や過労死や突然死などに終わるとされます。
 とりわけ、スポーツ選手の場合、マスコミなどから注目を集めた選手生活のピークの一時期が華やかであっただけにその後の新たな目標を見いだせず、「選手生活のピークが人生そのもののピークであった」という形になってしまう者も散見されており、そこに燃え尽き症候群が発生しているようです。

 一時期でも成功者となれたキャリアがあれば、その後の人生においてもまた別の分野で輝けるのではと、思えなくもないのですが、人間の心の問題は奥が深いと言わざるを得ません。奥大介容疑者には早く更正して第二の人生を取り戻して欲しいと願いますし、高校時代から大リーグまで、豪速球が脳裏に浮かぶ、故伊良部秀輝投手には謹んでご冥福をお祈りいたします。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130608-OHT1T00016.htm
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20130228/E1361978604520.html?_p=1
伊良部秀輝 野球を愛しすぎた男の真実(団野 村 著)PHP研究所 2013年
伊良部秀輝 ラストインタビュー(田崎 健太 著)デジタルディレクターズ 2011年
http://ja.wikipedia.org/wiki/燃え尽き症候群
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