アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

アディポネクチン (Adiponectin)、その脅威のアンチエイジング効果

 今年になってから、食事法や栄養、遺伝子など、健康やアンチエイジングを目指した勉強をして参りました。以下、題名をクリックしていただければそのページに移動します。

マクロビオティックのスピリッツ(01月02日)
科学?/非科学? 今、密かなブーム「糖質制限食」の是非(01月23日)
パレオ(パレオリシック Paleolithic,旧石器時代)ダイエット(07月04日)
健康レシピ:アボガドとクルミ入り麻婆茄子(マーボナス)(07月17日)
もっと健康なレシピ:スモーク・サーモンのアボガドとクルミ添え、亜麻仁油のドレッシング(07月22日)
科学?/非科学? ファスティング(断食)の美容・アンチエージング・疾病における有効性を検証(08月11日)
マグロ ユッケのアボガド和え、亜麻仁油、クルミ添え(08月31日)
解明されつつあるサーチュイン遺伝子のアンチエイジング効果(09月07日)

 当ブログの元々の目的はアセンションでありました。もうお気づきかも知れませんが、アセンションに加えて、己の健康を見直してアンチエイジングを是非とも自ら実現したい、と言う気持ちでおります。私にとってブログは、「勉強おまとめノート」みたいな場でありますが、参考にしていただきお役に立つことがあれば幸いです。

アンチエイジングの画像

 さて、アンチエイジングで検索すると、少なからずヒットしてくる物質があります。「アディポネクチン」、今日はこの聞き慣れない脂肪細胞由来のホルモンを取りあげます。


◇ アディポネクチン概要

 アディポネクチン (Adiponectin) は、主として脂肪細胞から分泌される、ある種のホルモンであります。1996年、大阪大学医学部の松澤裕次教授(現住友病院長、内分泌代謝学)により発見されました。この発見は瞬く間に世界に広がり、世界中の医学界にとって希望の光となっています。血中濃度は一般的なホルモンに比べて桁違いに多く、μg/mlオーダーに達するとされ、その世界が注目する生理作用は以下の通りです。

 ・インスリン受容体を介さない糖取り込み促進
 ・細胞内の脂肪酸減少からインスリン受容体感受性亢進
 ・肝AMPキナーゼを活性化させてインスリン感受性亢進
   →高インスリン血症、糖尿病の改善
 ・脂肪酸の燃焼
 ・血管内皮細胞と単球の接着阻害作用
 ・マクロファージの貪食能の低下作用
 ・血管平滑筋細胞の増殖抑制作用
   →動脈硬化抑制、心筋肥大抑制
 ・抗炎症
 ・肺気腫の改善
 ・抗がん作用


 血中アディポネクチン濃度は内臓脂肪量に逆相関するとされ、肥大しすぎた脂肪細胞からはかえって分泌量が減少します。痩せ過ぎで脂肪細胞が少ない場合でも分泌が不十分となり、適度な脂肪量が良いと言われます。


◇ アディポネクチンの抗メタボリックシンドローム効果に関する論文

 まずは論説のようなかたちの医学論文が見つかりましたので、これを全文、供覧いたします。in vitro(生体の機能や反応を試験管内で行わせる試験や実験)、in vivo(生体の機能や反応を生体内で行わせる試験や実験)の両面から、アディポネクチンの糖代謝への関与、心血管病への有効性が詳しく説明されています。ちょっと長いですが、解りやすい文章だと思います。

 *****

糖尿病と動脈硬化 [II] 脂質代謝とアディポサイトカイン

アディポネクチンと糖尿病・心血管病の分子メカニズム

門脇 孝、山内 敏正、窪田 直人

 生活習慣病・糖尿病の最大の原因は肥満であり,肥大脂肪細胞から過剰に分泌されるTNFα,レジスチン,FFAなどの作用の結果,インスリン抵抗性が惹起される. このようなインスリン抵抗性惹起性の悪玉アディポカインに加え,インスリン感受性増強作用を有する善玉アディポカインの役割が注目されている (Nature Medicine 2001 ; 7 : 941―946). 代表的な善玉アディポカインであるアディポネクチンはAMPK (AMP-activated protein kinase) を骨格筋および肝臓において活性化することにより脂肪酸の燃焼と糖の取り込みを促進しインスリン抵抗性を改善する (Nature Medi- cine 2002 ; 8 : 856―863). アディポネクチン自身の遺伝子多型 (日本人の約40% が有する) や高脂肪食による肥満などの環境因子によりアディポネクチンの欠乏が惹起され,インスリン抵抗性の原因となっている (J Biol Chem 2002 ; 277 : 25863―25866, Diabetes 2002 ; 51 : 536―540).
 また,動脈硬化モデル動物 ApoE欠損マウスとアディポネクチン遺伝子過剰発現マウスとを交配したマウスを作製・解析したところ,アディポネクチンによってマクロ ファージにおける脂質蓄積が抑制され,その結果ApoE欠損マウスの動脈硬化が抑制されること,さらにアディポネクチン欠損マウスで血管の炎症性内膜肥厚が亢進することから,アディポネクチンはインスリン抵抗性改善作用に加えて,動脈硬化抑制作用を持っていると考えられる (JBiolChem 2002;277:25863―25866,JBiol Chem 2003 ; 278 : 2461―2468).
 最近発現クローニングによって2つのサブタイプ (AdipoR1 並びに AdipoR2) のアディポネクチン受容体を単離・同定することに成功した (Nature 2003 ; 423 : 762― 769).骨格筋には主にAdipoR1が,肝臓には主にAdipoR2が発現し,血管やマクロファージにはAdipoR1/AdipoR2の両者が発現している. AdipoR1は骨格筋におけるアディポネクチンの糖の取り込み・脂肪酸燃焼の促進を媒介し,AdipoR2 はアディポネクチンの肝臓における脂肪酸燃焼促進を媒介する. また,肥満モデルマウスではAdipoR1/AdipoR2のダウンレギュレーションとそれに伴うアディポネクチン抵抗性が認められる (J Biol Chem 2004 ; 279 : 30817―30822). したがって,アディポネクチン受容体の作動薬や受容体増加薬は新規の効果的な抗糖尿病薬,抗炎症薬,抗動脈 硬化薬として期待できる.


The Role of Adiponectin in Molecular Mechanisms of Diabetes and Cardiovascular Diseases.

TAKASHI KADOWAKI, Department of Metabolic Diseases, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo.


アディポネクチン論文 門脇氏

Key words
 肥満
 インスリン抵抗性
 アディポカイン
 アディポネクチン受容体



はじめに

 現在,メタボリックシンドローム(代謝症 候群)は,心血管病の最大のリスクファクター ではないかと考えられている. メタボリックシンドロームがどのようにして起こるかにつ いて,現在,理解されているアウトラインを図 1 に示す. 最近の欧米型生活習慣に代表さ れる高脂肪食,運動不足など,エネルギー過剰に陥りやすい生活習慣のもとで肥満が惹起 され,肥満がインスリン抵抗性の原因となり,インスリン抵抗性によって,糖尿病,高脂血 症,高血圧など心血管病のリスクファクターが一個人に集積する. 本稿では,肥満がなぜ インスリン抵抗性を起こすのかということを,脂肪細胞から分泌されるさまざまな生理活性物質アディポカイン,アディポネクチンに関する最近の話題を中心に,メタボリックシンドローム・心血管病の成因や,あるいは新しい治療法などについても展望しながら述べる.

アディポネクチン論文 図1

1.アディポネクチンのインスリン感受性促進作用

 われわれはアディポネクチンが最も重要なインスリン感受性調節アディポカインである と考え,メタボリックシンドローム形成にお ける役割を検討してきた.
 アディポネクチンは,大阪大学の松澤佑次先生のグループを含め世界の4つのグループが独立に発見したホルモンである. アディポネクチンの構造は,補体のC1qと相同であ り,N末端にCollagen-like domain,C末端にGlobular domainを認め,脂肪細胞から分泌を された後,Lodishらの報告によると一部はプロセスされて短いアディポネクチンも生成す る.
 メタボリックシンドロームのモデルマウスであるKKAyマウスは,高脂肪食下で肥満と インスリン抵抗性,高脂血症を起こすマウスである. 非常に興味深いことに,高脂肪食下 で肥満や脂肪細胞肥大が惹起されると,アディポネクチンは脂肪細胞特異的なホルモンでありながら,著明なダウンレギュレーションを受けることがわかった. そこでわれわれは遺伝子組換えでアディポネクチンを作製し,高脂肪食下のKKAyマウスに部分的補給をすると,インスリン抵抗性や高中性脂肪血症が改善したことから,肥満に伴うメタボリックシンドロームの重要な原因として,アディポネクチンのダウンレギュレーションが重要であることを初めて提唱した(図 2)(1).

アディポネクチン論文 図2

 アディポネクチンの作用機序について,われわれは短いフォームのアディポネクチンと 長いフォームのアディポネクチンがそれぞれ骨格筋と肝臓にはたらくことを報告してい (2). アディポネクチンは骨格筋と肝臓において,糖取り込みや脂肪酸の燃焼を起こす鍵 分子である AMP キナーゼを活性化する(図3)(2).

アディポネクチン論文 図3

 AMPキナーゼの活性化は,骨格筋では糖を取り込み,脂肪を燃焼する. また,AMPキナーゼの活性化は,肝臓では糖の新生を抑制し,脂肪を燃焼する. AMPキナーゼの活性化に加え,アディポネクチンの刺激は,より慢性的にはPPARαという脂肪酸燃焼のマスターレギュレーター,転写因子を活性化し,これらの作用が相まって,骨格筋と肝臓で中性脂肪の含量が低下し,IRS-1やIRS-2の機能を活性化することよりインスリン抵抗性を改善する.

2.アディポネクチンとメタボリックシンドローム

 脂肪細胞分化に伴って,アディポネクチンの発現が誘導される(図 4). このように非肥 満の小型脂肪細胞では,インスリン感受性亢進分子のアディポネクチンの発現が非常に多 いが,脂肪細胞が肥大するとアディポネクチンの転写が抑制される. レジスチンやTNFαでは逆のことが起こる. したがって肥満とは, 脂肪細胞のサイズが大きくなるということのみならず,アディポカインの転写がグローバ ルに変化する形質転換であると表現すること ができる(図 4)(3, 4).

アディポネクチン論文 図4

 脂肪細胞分化が障害された脂肪萎縮性メタボリックシンドロームにおいても,逆に脂肪 細胞肥大を伴う肥満においてもアディポネクチンの不足によりメタボリックシンドローム が発症し,それの病態はアディポネクチンの補充により部分的に改善する(1). また,チア ゾリジン誘導体は,脂肪萎縮性メタボリックシンドロームのみならず,肥満に伴うメタボ リックシンドロームの場合にも脂肪細胞分化を促進し,脂肪細胞を小型化させることによ り血中アディポネクチンレベルを上昇させることが知られている. このようにアディポネ クチン欠乏は,メタボリックシンドローム発症の中核的役割を担っている.
 また,肥満に伴って後天的にアディポネクチンの遺伝子の発現が低下するのみならず, ヒトにおいては遺伝子多型によって,体質的にアディポネクチンの分泌が一部既定されて いることがわかっている. われわれが(5)ヒトアディポネクチン遺伝子の SNP 解析をした結果,プロモーター領域の 2 つのSNPと連鎖不平衡関係にあるintron 276というSNPを同定した.
 GかTの組み合わせによりアディポネクチン遺伝子には3つの遺伝子型があるが,G/ G型は生まれつきT/T型にくらべてアディポネクチンの血中レベルが 2/3に低下し,インスリン抵抗性と糖尿病のリスクが亢進することが認められた. さらに,われわれの検討(5)により,日本人の40%はこの G/G型を持っており,このアディポネクチンの遺伝子多型で日本人の2型糖尿病の遺伝子素因の約15%を説明しうることがわかった(図 5). 実際にアディポネクチンの血中レベルが下がることが本当に糖尿病のメタボリックシンドロームのリスクとなることを確認する意味で,アディポネクチン欠損マウスを作製した. アディポネクチン欠損マウスは,インスリン抵抗性,耐糖能障害,高中性脂肪血症(6)と高血 圧(7)などメタボリックシンドロームを呈した(図6). 大変興味深いことに,インスリン抵抗性のみでは通常は高インスリン血症が起こってくるが,アディポネクチン欠損マウスはインスリン分泌がかえって低下し,アディポネクチンはインスリン分泌にも保護的に働く可能性も示唆された.

アディポネクチン論文 図5

アディポネクチン論文 図6

 また,動脈硬化モデル動物ApoE欠損マウスとアディポネクチン遺伝子過剰発現マウス を交配したマウスを作製・解析したところ,アディポネクチンによってApoE欠損マウスの動脈硬化が抑制されること(図7)(8),アディポネクチン欠損マウスで血管の炎症性内膜肥厚が亢進することから(6),アディポネクチンはインスリン抵抗性改善作用に加えて, 血管障害抑制作用をもっていると考えられる(図7).

アディポネクチン論文 図7

 したがって,アディポネクチンが低下すると,実際にメタボリックシンドロームにより 間接的に心血管病リスクが高まるのみならず,直接的にも動脈硬化が促進される可能性も想定される. アディポネクチンの欠乏は,アディポネクチン遺伝子多型など遺伝的な要因と,戦後の急速な生活習慣の欧米化による肥満など後天的要因とが合わさって惹起されると考えられる(図8).

アディポネクチン論文 図8

3.アディポネクチン受容体の構造・機 能・調節

 これらの結果から,アディポネクチンの欠乏は糖尿病・メタボリックシンドロームとそ れに伴う大血管障害の原因となっており,アディポネクチンの作用を増加させる治療は糖 尿病・メタボリックシンドローム・大血管症の根本的な治療法となることが示唆された. アディポネクチンの作用メカニズムを分子レベルで明らかにするためには,アディポネク チン受容体の同定がその第一歩となる. しかしながらこれまで,アディポネクチン受容体 同定の報告はなかったので,試みた.
 FACS (fluorescence-activated cell sorter) を用いてアディポネクチンとの結合を指標に骨格筋のcDNAライブラリーをスクリーニングした. アディポネクチンとの特異的結合を認めた分子の骨格筋細胞・肝臓細胞への発現実験あるいは,small interfering (si) RNAを用いた発現抑制実験などにより,アディポネクチンの細胞表面への結合やアディポネクチン作用への影響を検討した.
 その結果,骨格筋のcDNAライブラリーから7回膜貫通型のアディポネクチン受容体 (AdipoR)1をクローニングすることができた. 興味深いことに,AdipoR1は種を越えて酵母にまで保存されていた. さらに,この酵母ホモログは,グルコース欠乏時の脂肪酸酸化に重要な役割を果たすことが報告されている蛋白であった. 次に,ヒトゲノムデータベースをサーチすることにより,AdipoR1に高い相同性(アミノ酸レベルで66.7%)を示す遺伝子がつだけ存在し,AdipoR2と名付けた. AdipoR1は骨格筋に多く発現が認められたのに対し,AdipoR2は肝臓に多く発現が認められた. AdipoR1とR2は7回膜貫通型の構造を有し,G蛋白質共役型受容体(GPCR)である可能性が考えられたが,N末端側が細胞内,C末端側が細胞外となるtopologyを示したこと,及び既知のGPCRのセカンドメッセージに影響を及ぼさなかったことより,異なった受容体ファミリーに属するものと考えられた(図9). AdipoR1もしくはR2の培養細胞への発現は,globularアディポネクチン及び全長アディポネクチンの特異的結合を増加させ,アディポネクチンによるAMPK,p38 MAPK及びPPARαの活性化を増強し,脂肪酸燃焼及び糖取り込みの促進を増強した. アディポネクチンによるAdipoRを介した脂肪酸燃焼及び糖取込みの促進作用は,優性抑制型AMPKあるいはp38MAPKの特異的阻害剤によって,部分的ではあるが抑制された. これらの結果により,アディポネクチンはAdipoRを介したAMPK及びp38MAPKの活性化によって少なくとも一部,脂肪酸燃焼及び糖取り込みを促進していることが示唆された. 逆に,siRNAを用いて内因性AdipoR1もしくは R2の発現レベルを低下させると,globularアディポネクチン及び全長アディポネクチンの細胞膜表面への特異的結合が減少し,アディポネクチンによるPPARαの活性化や脂肪酸燃焼・糖取り込み促進効果が減弱 した(図 10).

アディポネクチン論文 図9

アディポネクチン論文 図10

 次に,われわれのアディポネクチン受容体の発現調整についての最近のデータを示す. ob/obマウスは肥満のモデルマウスとして最も代表的なものであるが,筋肉や脂肪組織で アディポネクチン受容体AdipoR1,R2の発現量が著明に低下していることがわかった. ob/ob マウスは著明な高インスリン血症を呈するので,インスリンがアディポネクチン受 容体発現量低下に関与するのではないかと考えた.
 そこで,in vitroのマウス骨格筋細胞 (C2 C12) では10^-8 Mのインスリン添加によって, AdipoR1,R2発現量は低下したが,その作用はPI3K阻害薬 (LY29002) によって消失するが,MAPキナーゼ阻害薬 (PD98059) によっては消失しないことも明らかとなった.
 したがって,インスリンによるAdipoR発現量の制御作用としては,インスリンがPI3Kを活性化し,そのことによりAdipoRの発現が抑制されると考えられる. 次にAdipoR遺伝子の上流を検索すると,転写因子Foxo1が結合しうるinsulin responsive elementとよばれる配列をAdipoR1でもR2でも多数同定することができた. PI3KによりAktが活性化しFoxo1のリン酸化を起こすことから,リン酸化されたFoxo1は核内から追い出され,転写がoffになる仮説を考えた. そのことを証明するために,恒常的活性型Foxo1 (ADA) をマウス骨格筋細胞 (C2C12) にtransfectionするとAdipoR1,R2発現量は増加し,ベーサルが上昇し,インスリンによる発現量低下効果もなくなった. つまり,Foxo1がアディポネクチン受容体の転写に関与し,インスリンはFoxo1の不活性化を起こすことがわかった.
 以上,このアディポネクチンの欠乏が肥満や遺伝素因によって起こり,インスリン抵抗 性に行き着くが,そのときに同時に肥満で認められる高インスリン血症は,アディポネク チン受容体のダウンレギュレーションを起こし,アディポネクチン抵抗性,アディポネク チン作用不全を惹起し,インスリン抵抗性を強め,インスリン抵抗性は高インスリン血症 を,よりさらに悪循環をきたすであろうということがわかった(図11). したがって,アディポネクチン欠乏や高インスリン血症に陥る肥満へと進行しないことが非常に重要である.

アディポネクチン論文 図11


おわりに

 アディポネクチンのさまざまな作用について,肝臓,筋肉,血管での作用を述べたが,視床下部や膵β細胞にもアディポネクチン受容体が非常に豊富に存在している. アディポネクチンは視床下部ではエネルギー消費調節に大きな役割を果たし,膵β細胞ではインスリンの分泌を促進する生活習慣病やメタボ リックシンドロームと非常にかかわりの深い分子であることがわかった(図12).

アディポネクチン論文 図12

 今後はアディポネクチン受容体に特異的に結合する低分子化合物のスクリーニングを行 い,抗糖尿病薬,抗炎症薬,抗動脈硬化薬の開発を行っていきたい.
 最近,植物防御ペプチドファミリーPathogenesis related (PR) proteinsの一種PR-5に 属するタバコ由来のオスモチンの立体構造がglobularアディポネクチンと相同であることがわかった. さらに,オスモチンは酵母にアポトーシスを起こすがその受容体は酵母におけるアディポネクチン受容体のホモログであることがわかった. 興味深いことに,植物ペプチドは哺乳類の細胞において,アディポネクチン受容体に結合し,アディポネクチン受 容体を介してAMPキナーゼ活性を上昇させることがわかった(11). これは,アディポネク チン/アディポネクチン受容体が,植物から動物まで進化上保存されている可能性の高いこ とを示している. また,オスモチンを始め植物防御ペプチドファミリーに属する蛋白は 種々の植物 (野菜・果物など) に豊富に多種類存在し,消化・分解されにくい. オスモチン以外にもAdipoR活性化能を有する蛋白の存在する可能性がある. したがって,摂取する植物の種類・量がメタボリックシンドロー ムの分子基盤の一部を形成している可能性がある. また,経口可能なAdipoRアゴニストを開発出来る可能性がある.

文献

1. Yamauchi T, et al : Nat Med 2001 ; 7 : 941.
2. Yamauchi T, et al : Nat Med 2002 ; 8 : 1288.
3. Okuno A, et al : J Clin Invest 1998 ; 101 : 1354.
4. Yamauchi T, et al : J Biol Chem 2001 ; 276 : 41245.
5. Hara K, et al : Diabetes 2002 ; 51 : 536.
6. Kubota N, et al : J Biol Chem 2002 ; 277 : 25863.
7. Ouchi N, et al : Hypertension 2003 ; 42 : 231.
8. Yamauchi T, et al : J Biol Chem 2003 ; 278 : 2461.
9. Yamauchi T, et al : Nature 2003 ; 423 : 762.
10. Tsuchida A, et al : J Biol Chem 2004 ; 279 : 30817.
11. Narasimhan ML, et al : Molecular Cell 2005;17:171.

質疑応答

 座長(岩本) どうもありがとうございまし た. 門脇先生には,初めの春日先生のintroductionにありましたアディポサイトから分泌される多様な生理活性物質のひとつ,特に善玉であるアディポネクチンを中心にお話しいただきました.ご質問,ご討議をお願いいたします.
 佐藤龍次(昭和大) これに関してはまったくの素人なのですが,実際にアディポネクチ ンというのは,現在市販されているキットは大塚や,つい最近は富士レビオなどを小耳に はさんでいるのですが,先生のお話しのキットはこれらの方法ですか.
 門脇 これは第一化学薬品と共同開発したもので,これまでに特に市販はされておりま せん.これまでのものは総アディポネクチンを測るものが主だったと思います.
 佐藤 そうしますと,今回先生のご研究というのは,エラスターゼか何かで分解したも のということですか. ちょっとわからないのが,大塚のキットというのは,ただ熱か何か で測定するのですか.
 門脇 熱変性なしでネイティブなアディポ ネクチンを測る方法も現在臨床治験中だと理解しています.
 佐藤 そうしますと,エラスターゼで分解した方法と,熱で変性させた方法とでは,たとえば年齢によってアディポネクチン値は変化するものなのでしょうか.
 門脇 年齢の影響も多少はあるかもしれませんが,性の影響,gender differenceが非常に強くて,女性で高く,男性で低いのですが,high molecular weightを測るとその差はもっ と顕著で,女性は high molecular weight は非常に高いです.
 私どもがアディポネクチンの切断活性を有する酵素として同定したエラスターゼはneutrophilのエラスターゼです (Waki H, et al : Endocrinology 2005 ; 146 : 790―796). 私どもは,globularアディポネクチンの切断活性をさまざまな臓器や細胞系で見ました が,私どもが検討した中で切断活性を認めたのが好中球にあるエラスターゼで,その意味 づけとしては次のように推測しています. globularアディポネクチンは非常に強い抗炎 症効果を持っています. 炎症があるとそこにneutrophilが集まってきて,globularアディポネクチンが生成をされて炎症の終結に関わるのではないかと考えています.
 佐藤 そうしますと,たとえば女性などでは,やはり閉経後になってきますと,Body Mass Indexも増えてくるわけですから,アディポネクチンは当然低くなるわけですね.
 門脇 それは閉経後に内臓脂肪蓄積が強くなることと関連しているかもしれませんし, 性ホルモンの影響,たとえばエストロゲンが低下したりすることが関係している可能性が あります.
 佐藤 血中からアディポネクチンが漏れ出 てくるというのはどういう部分からでしょうか. やはり脂肪細胞から漏れ出てくるのですか.
 門脇 脂肪細胞だけが分泌をします.
 木村武量(阪大学生) アディポネクチン関連の薬剤と,従来型のインスリン抵抗性改善 薬であるビグアナイド製剤を併用した場合に,相乗効果は期待できるのでしょうか.
 門脇 アディポネクチンは肝臓でのAMP-kinaseを活性化して,筋肉でも活性化するわ けですが,ビグアナイド薬の作用機序は,今のところ肝臓でのAMP-kinaseの活性化作用が主であると考えられていると思います. そうしますと,アディポネクチンの作用の中に包含されてしまう可能性がないわけではないかもしれないと思っています. ただアディポネクチンには食欲を抑制する作用はないのですが,ビグアナイド薬ではその作用機序は不明で,もしかしたら脳内でAMP-kinaseを介している可能性もあります. そういう作用はアディポネクチンの作用と重なっていない可能性があって,その場合には併用すると効果があることになると思います.
 座長 どうもありがとうございました.

 *****



◇ アディポネクチンの慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する有効性

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease, COPD)は喫煙や排気ガスなどの大気汚染が原因となり、肺気腫や慢性気管支炎により引き起こされる肺の生活習慣病とされます。2020年には世界における全死因の第3位になることが予想されておりますが、根本的な治療が無いのが現状であります。以下、アディポネクチンがCOPDに有効であることを報告した日本経済新聞2011年1月21日の記事を掲載します。

 *****

 大阪大の研究グループは、ヒトの脂肪細胞で作られる善玉ホルモンが、喫煙などで起こる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に有効なことをマウス実験で突き止めたと発表した。「アディポネクチン」と呼ばれるホルモンで、メタボリック(内臓脂肪)症候群や糖尿病を防ぐ効果が知られている。これを増やせればCOPD治療に役立つ可能性がある。阪大の武田吉人助教と中西香織医師らの成果。

 COPDは喫煙や大気汚染が原因で肺気腫や気管支炎になり、息切れやせきやたんが続く。肺の生活習慣病といわれ、国内患者は500万人以上とみられるが、根本的な治療法はない。
 研究チームはアディポネクチンを体内で作れないように遺伝子操作したマウスを調べた。高齢になると肺の組織が壊れ、COPDとよく似た症状が出た。血管を保護する働きを持つアディポネクチンが失われ、肺の構造を保てなくなった。
 生後8週のマウスにアディポネクチンを外から補うと、肺の構造がほぼ正常に戻り、2~3割低下していた呼吸機能もほぼ正常まで回復した。今後、ヒトでも同様の効果があるか調べる。

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され動脈硬化などを防ぐ。肥満や喫煙で分泌量が減ると糖尿病などを発症しやすくなるとされる。成果は米医学誌電子版に掲載された。

 *****



◇ アディポネクチンの抗がん作用

 インスリン自体にがん細胞の増殖を促進する作用があると言われます。また、インスリンはがん細胞の増殖を促進するとされるインスリン様成長因子-1 (IGF-1) の活性を高め、高インスリン血症は、IGF-1の活性を制御しているIGF-1結合蛋白の産生量を減少させ、その結果、IGF-1の活性が高めるとされます。このIGF-1は、70個のアミノ酸からなり、インスリンと似た構造をしていて、がん細胞の増殖や血管新生や転移を促進する作用があります。IGF-1受容体とインスリン受容体も類似しており、IGF-1とインスリンが交差反応することが知られています。高インスリン血症では、インスリンがIGF-1受容体に結合して、IGF-1と同じように細胞の増殖を促進します。
 さらにプレ糖尿病から糖尿病になって血糖が上がると、がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として大量に取り込んでいるため、がん細胞の増殖に有利になります。高血糖は活性酸素の産生を高め、血管内皮細胞や基底膜にダメージを与えて、血管透過性を高め、転移を起こしやくするという説もあります。
 大腸がんの患者は健常な人と比べて、血糖値や血中のインスリン濃度が高いという報告があります。高インスリン血症は肝臓における性ホルモン結合グロブリンの産生を抑制するので、フリーのエストロゲンが血中に増えて、乳がん細胞の増殖を促進することも指摘されています。
 このように様々な理由で、高血糖や高インスリン血症は、がん細胞の発生や増殖や再発のリスクを高めることになるのです。

 アディポネクチンに抗がん作用があることが報告されています。人の胃がん細胞を移植したマウスにアディポネクチンを注射すると、がんが著しく縮小したという報告があります。また、アディポネクチンの低い人ほど大腸がん、前立腺がん、子宮体がん、乳がん、胃がんの発生率が高いという報告があります。
 このアディポネクチンのがん予防効果は、インスリン感受性を高めて血中のインスリン濃度を低下させるためと推測されています。つまり、インスリン感受性を高める(=インスリン抵抗性を低下させる)ことはがんの予防に効果が期待できることが指摘されています。また、アディポネクチンはがん細胞の増殖を抑えるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することも明らかになっています。


◇ アディポネクチン分泌を促す食生活

 アディポネクチンの分泌を促す(食)生活を勉強しました。

1.糖質制限、ファスティング、フィットネス

 「概要」で示しました通り、アディポネクチンは肥大しすぎた脂肪細胞からは分泌量が減少します。一方、痩せ過ぎで脂肪細胞が少ない場合でも分泌が不十分となり、適度な脂肪量が良いと言われます。こうした体型を獲得する方法として、当ブログでも取りあげました糖質制限、ファスティングに加えて脂肪を燃焼するフィットネスが有効と考えられます。糖質制限やファスティングによって、摂取カロリーが制限されたところでフィットネスでカロリー消費、エネルギー源として、体脂肪分を分解する「自己融解現象」が起こります。その結果、肥大した脂肪細胞が減少して、アディポネクチン分泌に理想的な体質を獲得すると言う考え方です。

2.アディポネクチン分泌を促す食品

 アディポネクチンの分泌を促す食品として以下が指摘されております。

 ・マグネシウム
 ・食物繊維
 ・エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、EPA)
   =サバなど青魚に含まれるフィッシュオイル
 ・大豆タンパク(豆腐)
 ・酵母(ビール酵母など)

豆腐画像001
アディポネクチン分泌には豆腐摂取が1番!

3.アディポネクチン類似物質の摂取

 トマトやジャガイモ、キウイなどに含まれるオスモチンという成分が、アディポネクチンに似た構造をしており、こちらはペプチドタンパクで口から食べても吸収されるため、
肥満者のアディポネクチン不足を補えるのではないかと期待されております。


◇ アディポネクチンの分泌を促進するサプリ

 サーチュイン遺伝子でもそうでしたが、アンチエイジング効果を持つ物質を促すサプリメントはあっと言う間に開発、販売されます。人体に害が無ければ効果は二の次みたいなところを感じますが、いちおう一つばかりHPを掲載します。

アディポネクチンサプリのページ


http://ja.wikipedia.org/wiki/抗老化医学
関連記事
スポンサーサイト

管理者にだけ表示を許可する