アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のヘミシンク体験とスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

増加する安楽死希望者の記事から

◇ ブラック・ジャック vs ドクター・キリコ

 子供の頃の愛読書、故 手塚 治虫 氏の「ブラック・ジャック」にしばしば現れた登場人物、ドクター・キリコ は苦痛を伴う不治の病の患者に対して安楽死を行う医者でありました。患者側の死にたいと言う強い希望があって、その疾病、激しい苦痛から逃れられないことが明白である時、ドクター・キリコの出番となるですが、主人公であるブラック・ジャックは彼に対して否定的な立場をとっておりました。しかしながら、故 手塚 治虫 氏はストーリーの展開の中で、ドクター・キリコとブラック・ジャックを対等に扱っており、どちらが正しいとの結論を出さない場合が多かったように思います。すなわち、自らも臨床医であった氏は安楽死について中立の立場であったように想い出されます。

ドクターキリコの会話


◇ 安楽死のためのスイス渡航者5年で611人

 さて先日、タイトルの如き記事を見つけました。スイスで認められている安楽死を希望して同国に訪れる旅行者が増加しているとのものです。全文を供覧いたします。

安楽死の記事見出し

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 安楽死する目的でスイスを訪れた「自殺旅行者」が2008-2012年の5年間で611人に上ることが、スイス・チューリヒの法医学研究所がまとめた実態調査で明らかになった。それによると、旅行者611人は31カ国からスイスを訪問。特にドイツと英国からの旅行者が多かった。英国では死ぬ権利を訴える6団体が年間約600人の自殺を手助けしており、うち150-200人が自殺を目的に渡航しているという。
 611人のうち58%は女性で、年齢は23-97歳、平均年齢は69歳。半数近くが神経疾患を抱えていたほか、がん、リウマチ、心臓疾患など複数の疾患を持つ人も多かった。安楽死では4人を除く全員が鎮静麻酔薬のペントバルビタールナトリウムを投与され、大半にスイスの死ぬ権利を訴える団体がかかわっていた。

 自殺を目的とした旅行者の数は2008年の123人から09年には86人に減少した後、09-12年の間に172人へと倍増している。回復の見込みのない患者や多大な苦痛に見舞われている患者に対し、医師が安楽死を手助けすることを認めるかどうかを巡っては各国で論議が交わされてきた。
 スイスでは医師の間の倫理規定はあっても、幇助(ほうじょ)自殺の具体的な条件を定めた法律は存在しない。ドイツでは自殺幇助は倫理的に認められておらず、意識を失っていく患者に対して医師が何もしなければ、罪に問われる可能性もある。英国、アイルランド、フランスでは自殺幇助が違法とされているいるが、裁判に持ち込まれたケースもある。欧州12カ国で実施した意識調査では、幇助自殺の合法化に賛成する回答が過半数を占めた。

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 以前、「抗精神病薬後遺症に関するYahoo知恵袋に異論」(本年2月27日)と題した記事の中で、オランダでは国籍を有する者に対して「安楽死法」が施行されることに触れましたが、オランダに同法律が制定されたのは2001年であるのに対しスイスは1942年から施行されていたようです。


◇ 安楽死 覚え書き

1.安楽死の概念

 安楽死(euthanasia)とは、患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助してに死に至らせること(積極的安楽死)、および、患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること(消極的安楽死)とされます。
 消極的安楽死は、後述いたしますが、多かれ少なかれ日本の医療でも行われており、私も経験があります。一方、我が国において、積極的安楽死は法的で明示的に認めておらず、刑法上殺人罪の対象となります。以下に、本邦における過去の判例を2件示します。

2.名古屋安楽死事件の判例

 1962年(昭和37年)の名古屋高裁の判例では、以下の6つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は違法行為となると認定しています。

 1)回復の見込みがない病気の終末期で死期の直前
 2)患者の心身に著しい苦痛・耐えがたい苦痛
 3)患者の心身の苦痛からの解放が目的
 4)患者意識が明瞭、意思表示能力あり、自発的意思で安楽死を要求
 5)医師が施行
 6)倫理的に妥当な方法

3.東海大学病院安楽死事件の判例

 1995年(平成7年)の横浜地裁の判例では、下記の4つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は違法行為となると認定しています。

 1)患者の耐えがたい激しい肉体的苦痛
 2)患者の病気は回復の見込みがなく、死期の直前
 3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために可能なあらゆる
   方法で取り組み、その他の代替手段がない
 4)患者の自発的意思表示で、寿命の短縮、今すぐの死を要求

4.積極的安楽死を認めている国

 スイス      1942年
 米国オレゴン州  1994年 「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」
 オランダ     2001年 「安楽死法」
 ベルギー     2002年 「安楽死法」
 ルクセンブルグ  2008年 「安楽死法」
 米国ワシントン州 2009年

5.積極的安楽死を賛成する主張

 本邦において、積極的安楽死を法律で容認することに賛成する主張は以下の通りです。

・生に対する要求と死に対する要求、治療を受けるか受けないか、延命するかしないか、患者の自己決定権は最大限尊重されるべき
・キリスト教文化圏の国では個人尾自己決定権を尊重して、積極的安楽死が法律や判例で容認されている国があり、日本も見習うべき
・生命の継続・延命を強要し、心身の耐え難い苦痛を継続させることは虐待や拷問であり、死生観の強要である
・あらゆる形態・手段による延命治療は有害無益な医療であり、医療費の公費負担は回復する見込みがある医療に限定して使うべき

6.積極的安楽死に反対する主張

 本邦において、積極的安楽死を法律で容認することに反対する立場として、下記の主張をする集団からの圧力により、患者の自己決定権・生存権が侵害され、死を強要される可能性がある、とされます。

・日本は過剰な社会保障費・医療費を浪費しているので、社会保障費・医療費を削減すべき
・就業世代が高齢者のために、健常者が回復不可能な病人のために、過剰な医療費負担を強いられているので医療費を削減すべき
・あらゆる形態・手段の延命治療は無価値で無駄な医療であり、延命治療に対して医療費を公費負担は一切すべきではない


◇ 消極的安楽死を行った1例

 日本の法律において消極的安楽死は、刑法199条の殺人罪、刑法202条の殺人幇助罪・承諾殺人罪にはなりません。万国共通しているのは、終末期の患者には延命可能性が全くないかまたは長くても月単位なので、終末期の患者に対する延命治療は、皇族・王族・大統領・首相などの特別な社会的地位の人を例外として一般的ではなく、終末期の患者に対する消極的安楽死は広く普及しております。

 私の周囲でも、終末期の患者に対して延命治療を行わないかたちでの「消極的安楽死」は日常的でありますが、もう少し踏み込んだかたちの安楽死を経験しましたのでご報告します。いつもの通り時期、地方は明確にいたしません。

 50代前半の女性、進行胃癌で食事摂取が困難な状況であり、右の卵巣が大きく腫脹しておりました。タレントの榊原郁恵さんのような雰囲気で、とても明るく気丈な女性で、男女2人の子供とご主人がいましたが、家族の中では彼女が中心的な存在でした。
 本人に、元疾患診断と卵巣への転移(Krukenberg 腫瘍)の可能性を説明したうえで幽門側胃切除術、右付属器切除術を施行しました。病理診断で卵巣腫瘍はやはり胃癌からの転移でありました。
 術後経過は良好で10日前後で退院、外来化学療法を行いましたが、手術から半年ほど経ったところで、歩行困難を訴えるようになりました。痛みは無いのだけれど右下肢に力が入らず前に出せないと、、、。腰部Xp、MRIなどで腫瘍が腰椎に発生して神経を圧迫していることが判明、放射線治療を検討しましたが、病状の進行は早く、10日前後で両脚ともに動かなくなり完全に歩行は不可能、臥床状態となりました。いわゆる下半身不随です。その上、骨盤神経領域の感覚も麻痺しており、便意や尿意が感じられなくなっておりました。
 ご本人に病状の説明をして、設備が整った遠方の病院に通って放射線治療を行えば少しは改善する可能性があることをお話し、腰椎転移による痛みはなく、他に遠隔転移、局所再発がありませんので、生命予後としてはまだすぐにどうこう言う状態ではないことも説明しました。
 しかし、気丈な彼女は、家族に頼って遠方の病院に通うのはできないと言い、しかもオムツに排便してそれを替えてもらうのはとてもできないと言って、食事摂取を一切、拒否するようになりました。何度も説得しましたが、彼女は食事を摂りません。かろうじて末梢静脈からの点滴はさせてもらいましたが、どうしても食べないなら中心静脈栄養をしましょうと提案しましたが、それも拒否、ただただ終日、ベッドに横になるばかりで、殻に閉じこもるような、永眠までの1ヶ月でした。間違いなく死を選択した患者に対して、本人の同意が得られないと言う理由から治療を終了した1例でありました。


◇ おわりに

 上述の如く、積極的安楽死は国際的に合法化される方向にあります。そして、スイスでの安楽死を希望する渡航者が増えているとの記事、これは終末思想やニューエイジ思想との関連や、新しい死生観の始まりなのかも知れません。過去の事例のように、医師が手を下すかたちの積極的安楽死が行われたところで議論にするのではなく、多くの場合を想定した国民的な議論の場を設けて、問題に向き合う姿勢が求められる時期が来ているように思います。
 ただ、個人的には、もしも「安楽死法」が日本に制定されて、患者が希望すればそれを施行することができるようになったとしても、1つの命を絶つことに対して、医者の側にも選択権、はっきり言えば拒否権を与えて欲しいと考える次第です。

 医療系の話ではありますが、死生観にも関わる社会的事象ですのでスピリチュアルの周辺記事として登録いたします。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140821-35052666-cnn-int
http://ja.wikipedia.org/wiki/安楽死
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