アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

目を開けたまま息を引き取るということ

 以前、突然の心停止を来す一連の疾患で起こる現象であるアダムス・ストーク症候群の患者の経験をお話しました。最近になって、題名を「臨死体験/死後の世界;アダムス・ストーク症候群では起こらない?」(昨年8月14日)と変え、カテゴリーも「スピリチュアル」の範疇に変更しましたが、同記事で紹介したような致死的不整脈で命を落とされる患者は私にとっては極めて稀です。消化器外科医ですので癌の末期となり看取るケースがほとんどです。
 これまでの25年間、多い時には月に3-5件、無い時は数ヶ月も機会がないこともあり、正確な数は知りませんが、年間20件なら計500件ほど、患者を看取って参りました。多くの患者は、血圧低下、代謝性アシドーシス(血液が酸性になる)、腎不全や循環不全を伴う多臓器不全から、昏睡状態での死でありましたが、これまでの3例ほど目を開けたまま息を引きとった患者がおりました。たいへん印象的であったのでご紹介いたします。時期や地域については言及いたしません。


◇ 娘の後ろ姿を目で追った30代胃癌女性

 30代中盤の女性、離婚して母子家庭とのこと。食欲不振、嘔吐で来院し、胃カメラを行ったところ、胃の出口が閉塞を来した進行胃癌でした。腹部CTでは、腹腔動脈を巻き込んで腫大したリンパ節が、胃腫瘍と、背側では膵、後腹膜と一塊となっており、しかも大量の腹水貯留が認められました。即座に切除不能と判断しましたが、食事摂取が可能となるように、胃と腸をつなぐバイパス術を行いました。術後経過は良好で、4病日には流動食を開始し、10日目で全粥となりました。
 化学療法を提案しましたが、まずは娘と2人暮らしの自宅に帰りたいとの希望があり、退院となりましたものの、10日ほどで再入院、腹水貯留が増加しており、疼痛を伴っておりました。補液と利尿剤の増量、緩和治療を開始して、小康を得ましたが、確実に全身状態は弱っていきました。
 再入院から10日ほどしたある日曜日のお昼、10代の1人娘が来ていて、「冷たいお茶が飲みたい」、母の言葉に、自動販売機へと娘は部屋を出ました。その直後に心電図モニターがフラットとなり、回診後、たまたま、まだ病棟に残っていた私は個室のドアを開けました。娘が出て行った後をしっかりと開いた目で追いながら患者は息を引き取りました。


◇ 孫の顔を凝視しながら逝ったご老人

 珍しい十二指腸癌で手術して5年目を迎えた80代女性が末期癌状態で入院して来ました。過去のカルテを閲覧すると癌細胞が腹膜に播種した状態(原発の腸管内に留まらず拡がった状態)でしたから、5年も生存したのは幸運と言える患者でした。ずいぶんと気丈な方で、遠くからたくさんの親戚が見舞いに来て、病室はいつもにぎやかでしたが、1人だけ気になる孫がいて、まだ来れないでいると言っていました。
 そろそろ今日、明日か?、と言う状況が続いたある夜中、その、気になる孫が到着しました。20代の青年だったと思いますが、患者であるご老人は、多数のご家族に囲まれて、そのお孫さんの首に両手をかけて、じっと彼の顔を凝視していました。わずかに震える面持ちで目をカッと開いて孫の顔を観るご老人には、あの世までけっして忘れないと言う強い意志が感じられました。やがて、孫を捉える腕が力なく落ちて、息を引き取ってまらも両目は開眼したままでありました。


◇ 妻の心に「ありがとう」と唱えた男性

 60代後半の男性、スキルスと呼ばれる進行胃癌で胃全摘術後、抗癌剤を受けましたが、約1年で腹膜再発、腹水貯留が著明で、いよいよ終末期を迎えました。背中に広くTATTOOがあって、「先生〜!、ぜんぜん良くならねえよ!」とべらんめい調の言葉、ずいぶんと苦労されたのではないか?、気が強そうな顔付きの奥さんが印象的でした。
 もうそろそろかな?、と思っていたある休日の朝、病室を訪れて「どう?」って声をかけると、仰向けで腕組みした彼はこくっと頷きました。安定しているようだったのでそのまま部屋を後にしました。奥さんが椅子に座っていました。
 その約10分後、ナースコールが鳴って、駆けつけると奥さんが号泣していて、患者はご臨終でありました。「どうしたの?」と問うと、奥さんは泣きながら説明しました。奥さんはいつも通りの雑談をしていたのですが、ふと感じるものがあって、椅子に座って患者と目を合わせたそうです。全く無言であった患者が、突然、ポロっと涙を流して、その時、奥さんの心の中に「ありがとう」との言葉が飛び込んで来て、見つめ合ったまま、患者は呼吸が止まったと、、、。もちろん、私が駆けつけた時も目は開いたままでした。


◇ 事故、外傷とは異なる死線期

 目を見開いたままで死に至るのは、映画やテレビドラマなどで、事故、外傷による即死の際によく見られます。交通事故で頭部を強打した場合や、鉄砲に打たれて即死状態、首を絞められての窒息死などで、目を見開いた、本当にそういう死に方をするのかどうか?、あまり現実には見たことがないので解りません。しかし、直前まで循環動態が安定した健康体で、不測の事態から死線期に及び、目を閉じる間もなく死に至ったことは想像できます。
 病死、とりわけ癌死における死線期は、全身状態が不安定で、多くは意識消失が起こるほどに血圧が低下しています。そんな状況でも目を開けたままでその時を迎える患者は、事故、外傷と異なる死線期であり、それは、ずっと予見していた己の死が今、この時、訪れると意識した状態であります。死への意識から、最後まで現世の何か大切なものを見つめて、それが血圧の低下とともに薄れて行く、そして死出の旅立ち、そんな瞬間なのだろうと思います。

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◇ 臨死体験/死後の世界との関わり

 臨死体験において、病室のベッドで仰向けの自分の姿を見た経験などが話されております。死後の精神世界があるとの考え方から、死線期において早くも体から離れた意識が己の姿を見ているとの発想であります。私が経験した症例は、全身状態が極めて不良な、末期癌の状態でありながら、死線期においても己の肉体に留まり、現実の映像を見つめ続けた患者たちでありました。
 死後の世界があるのかどうか、本当のところは解りませんが、こうした経験から言えるのは、人の死には様々な形態があるように考える次第です。


 患者さま達には、貴重な経験をご教示いただいた感謝の気持ちとともに、ご冥福を今なおお祈りしております。
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23:こんばんは。

9月20日に我が家の19才のオスのわんこが息をひきとりました。
寝たきりの3ヶ月が過ぎた時でした。

やはり目は閉じていなかった。白内障で見えていないからだと思っていました。
今は写真とお花、時々お線香をたいています。

2014.10.15 22:34 ビヨンド #qTBLcBRs URL[EDIT] 返信
24:

メールありがとうございます。ワンコの死を私も経験しています。目を開けたままの死がおおいですよね。死ぬ直後に目を見開いて現世を実とどけるのは動物でも人間でも同じ本能かもしれません。

2014.10.16 01:14 お名前をお入れ下さい #- URL[EDIT] 返信
56:父も…

父も癌で亡くなりました。 肺に水が溜まり、モルヒネでは苦しさが取れなかったため、最後はセデーションでした。
父も目を開けたまま亡くなりました。
目を開けたまま亡くなるのは珍しいのですか?
まだ若かったし、治ると思い治療を頑張ってきたので、この世に未練があって目を開けたままなのかと…。
大好きな家族に見守られながら亡くなったので、まだ生きたい!皆を見ていたい!そういう想いから、目を開けたまま亡くなったのでしょうか、、

主治医にも聞けずずっと心に引っ掛かっておりました。
よろしければ教えてください。

2016.08.22 01:16 さやか #- URL[EDIT] 返信

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