アセンションへの道程 〜ある外科医のスピリチュアル〜

アセンションを目指したある1外科勤務医のスピリチュアルおよびその周辺事項への探求をご紹介します

快眠でアンチエイジング! 〜 睡眠のメカニズムと快眠を得る工夫 〜(第二版)


 私事、既報の通り、6月よりある病院で総合診療科として午前午後の外来を持ってやっております。そろそろ30年を超える外科医生活でありますが、高血圧の初期治療や、慢性疲労の原因を究明したりと、なかなかこれまでになかった経験をさせてもらっている次第です。そんな中、実に多くの人が睡眠障害に苦しんでいるのが分かります。中年期に差し掛かろうかと言う年代の女性に多い印象があり、「眠りが浅い」、「夜中や明け方に目が醒める」、「朝が辛い」、「昼間眠い」など、症状は様々です。ここでは、睡眠について勉強をし直して、約2年前に投稿したものに新たな知見を加えて更新し、第二版として投稿させていただきます。

 アンチエイジング関連として「禁煙および受動喫煙の排除」に続いて、快適な睡眠(快眠)を考えてみました。睡眠は人間にとって必要不可欠なものであり、1日8時間睡眠とすると、人生の1/3は眠っている事になります。忙しくて睡眠時間が短くとも深い睡眠が得られている人がいれば、時間はあっても不眠症気味で浅い眠りに悩まされている人もいるでしょう。睡眠において、、、

 ・布団に入ったらすぐにぐっすりと眠りたい
 ・深くて心地よい眠りを味わいたい
 ・スッキリ健やかに目覚めたい


 、、、と考える人は多いと思います。現代人の5人に2人は睡眠に関わる問題を抱えているとされます。ここでは、「睡眠力を上げる」方法論を、いろんなサイトから引用してみます。ちなみに、様々な動物が睡眠のパターンがあるようですし、赤ん坊と子供と大人でも違いがあります。ここでは人間の成人のみに絞って睡眠を考えます。


◇ 睡眠の定義

 睡眠(すいみん、sleep)とは、眠ること、すなわち、周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態のことであります。身体の動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われていますが、簡単に目覚める状態でもあります。


◇ 睡眠の2つのメカニズム

 成人の睡眠は大きく2つのメカニズムで形作られているとされます。その第1は、起きている間の疲労蓄積からくる「睡眠欲求」、第2は体内時計から発信される「覚醒力」であります。

1.睡眠欲求

 睡眠欲求は起きている時間が長いほど強くなります。徹夜などで長時間起きていると、普段寝つきが悪い人でもすぐに眠っていまい、しかも深い眠りになることが多いと言われています。一度、眠ると、この睡眠欲求は減少します。さらに(その人にとって)十分な時間たっぷりと眠ると睡眠欲求は消失すると言われています。

2.覚醒力

 「覚醒力」とは体内時計から発信され、1日の決まった時刻に増大し、睡眠欲求に勝ることで人を目覚めさせます。普段の就床時刻の数時間前に最も覚醒力は強くなり、その後、後述のメラトニンという物質が分泌される頃(就床時刻の1~2時間前)、急速に低下します。このために、私たちは食後の団欒の時など、すっきり目覚めていると思っていても、普段寝ている時刻あたりで急な眠気を感じるようになるのです。


◇ 睡眠のパターン

 20世紀に入り、人間の睡眠は脳波と眼球運動のパターンで分類されるようになりました。成人は、睡眠中にStage I, II, III, IV~REMの間を反復し、その周期は90分程度とされます。入眠やStage I〜IVとREM睡眠間の移行を司る特別なニューロン群が存在するとされます。快眠とは、生理的な睡眠のパターンを壊さない睡眠と言えると思います。以下、各Stageについて説明いたします。

1.Stage I

 傾眠状態です。脳波上、覚醒時にみられたα波が減少し、低振幅の電位がみられます。なお、Stage I〜IVをまとめてnon REM睡眠と呼びます。

2.Stage II

 脳波上、睡眠紡錘 (sleep spindle) と言う波形が出現してきます。

3.Stage III

 低周波のδ波が20 – 50%に増加して来ます。

4.Stage IV

 δ波が50%以上となります。

5.REM(Rapid eye movement)睡眠

 急速眼球運動 (Rapid Eye Movement) の見られる睡眠であります。身体的には骨格筋が弛緩状態にあり、急速眼球運動の他は身体はほとんど動かず、言うなれば身体を休めている状態です。脳波はθ(シータ)波が優勢で覚醒時と同様の振幅を示し、外見的には寝ているのに、脳は覚醒状態にあって、エネルギー消費率も覚醒時とほぼ同等であるため、逆説睡眠とも呼ばれます。この期間に覚醒した場合、夢の内容を覚えていることが多いとされます。人間では、6 - 8時間の睡眠のうち、1時間半 - 2時間をREM睡眠が占めます。

 Non REM睡眠とREM睡眠はおおまかに言うと以下のように大別されます。

 脳の眠り = non REM睡眠(stage I〜IV)
 体の眠り = REM睡眠


Hypnogrammの一例 図
Hypnogrammの1例


◇ 睡眠と体温

 夜は体温が低くなります。その原因の1つは、昼間と異なり、ほとんど体を活動させないことですが、それ以外にも、睡眠自体が体温を低下させていると考えられます。睡眠により体温は約1℃ほど下がります。夜間に、まったく眠らないでいても夜は体温が少しは下がりますが、眠ったほうがさらに体温は低くなります。睡眠に入ると、体温の基準値が下げられることにより、代謝が低下し、体内で生み出される熱の量(熱産生)が少なくなるため、睡眠自体が体温を下げているのだと考えられます。Non REM睡眠(深い睡眠)や、とくに眠りが深い「徐波睡眠」では、体温の低下が大きくなります。


◇ 睡眠中のホルモン活動

 睡眠により様々なホルモンが活動することが知られています。質の良い睡眠を取ることによりホルモンの働きで身体のメインテナンスを活性化することができます。つまり、快眠はアンチエイジングに大きく関与しているわけです。

1.Non REM睡眠中の成長ホルモン

 睡眠中の体内ではさまざまなホルモンが活動して、体のメンテナンスをしてくれます。まずは、深い眠りであるnon REM睡眠中に分泌されるのは成長ホルモンです。これは壊れたり、古くなったりした細胞を再生する働きがあります。お酒を飲んで代謝に使われた肝臓の細胞も再生するなど、あらゆる体の新陳代謝を活発にするのです。

2.REM睡眠中のコルチゾール

 一方、コルチゾールというホルモンは、浅い眠りであるREM睡眠中に分泌され、寝ている間のエネルギー供給のために、脂肪を燃やす働きがあります。だから睡眠不足が続くと肥満になりやすいのです。コルチゾールのもうひとつの働きは、肝臓にあるグリコーゲンを分解してブドウ糖にして、血糖値をあげることです。朝起きて、すぐに活動できるのも、このコルチゾールのおかげなのです。

3.睡眠不足とホルモン

 睡眠時間が短いと、食欲を抑制するレプチンというホルモンが出にくくなったり、朝のインスリン分泌が悪くなって糖尿病をはじめとした生活習慣病のリスクが高くなります。さらに睡眠中に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まると言われています。

睡眠による生体の変化
起床/睡眠による体温とホルモン分泌


◇ 睡眠におけるセロトニンとメラトニンの関与

 睡眠と覚醒の質をコントロールするホルモンとして注目されているのがセロトニンとメラトニンであります。人間が昼間に活動し、夜には眠たくなる、このサイクルを作る背景には、、、

 ・セロトニン → 昼間の活動
 ・メラトニン → 夜間の睡眠


、、、この2つの物質が関与しているとされます。快眠を得る工夫としてこれらのホルモンの相互作用を理解している必要は大いにあり、そのメカニズムを解説いたします。

1.セロトニン概要

 セロトニン(Serotonin, 5-hydroxytryptamine, 5-HT)は動植物に広く分布する生理活性アミン、インドールアミンの一種であります。ヒトでは主に生体リズム、神経内分泌、睡眠、体温調節などに関与します。

セロトニン構造式

2.セロトニンの合成と分泌

 体内のセロトニンは98%が腸管で合成され、2%が中枢神経系の大脳皮質、大脳辺縁系、視床下部、脳幹、脊髄で合成されます。腸管で合成分泌されたセロトニンは血液脳関門を通らないため、脳におけるセトロニンはあくまでも脳で合成されたものであり、これを「脳内セロトニン」と呼ばれます。健常男性は女性より約52%脳内セロトニンを産生する能力が高く、セロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の1/4に減少するとされます。

3.セロトニンの生理作用

 セロトニンは、腸管に対しては蠕動更新作用を有し、脳では、「危機管理」を行うノルアドレナリン、「快感」を伝達するドーパミンと合わせて、三大神経伝達物質と呼ばれています。

【三大神経伝達物質の特徴】
・ノルアドレナリン:危険を察知して交感神経を刺激、心身を覚醒させる
・ドーパミン:脳内で快感を伝達する役割を担う
・セロトニン:ノルアドレナリンやドーパミンのバランスを整え精神を安定させる

 セロトニンは、「危機管理」の役割を持つノルアドレナリンや、「快感」を伝達するドーパミンが過剰に分泌されて暴走してしまわないよう、バランスをとり人間の精神を安定させる作用を持ち、そのため、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
 セロトニンは睡眠においても重要な役割を持ちます。ノルアドレナリンやドーパミンの過剰な分泌は心身の興奮に繋がる交感神経の活性化を促し、「興奮してなかなか寝付かない」と言う状況に繋がります。セロトニンはこれらをコントロールすることで副交感神経が優位となる、いわゆる「休息モード」への準備を整えているとされます。

4.メラトニン概要

 メラトニン(Melatonin, N-acetyl-5-methoxytryptamine)は動植物、微生物に存在するホルモンであり、動物ではその血中濃度が1日の周期で変化しており、生物学的な機能における概日リズムによる同調を行っているとされます。

メラトニン構造式

5.メラトニンの合成と分泌

 メラトニンは、ヒトでは脳の血液脳関門の外側にある松果体と言う小器官でアミノ酸の一種であるトリプトファンからセロトニンを経て体内合成、分泌されます。先駆物質であるセロトニンが主に脳以外で合成されるのに対し、メラトニンは松果体のみでの合成であります。松果体によるメラトニンの合成は網膜への光刺激によって阻害されますが、暗闇によって促され、毎晩のその開始は、「薄明かりのメラトニン合成開始(dim-light melatonin onset, DLMO)」と呼ばれます。日常生活において、光の遮断により合成が促進されることは夜になって分泌が促され、朝になって光刺激を受けることでその分泌が抑制されます。また、メラトニンの合成は18歳をピークに以後は減少するとされます。

メラトニンの分泌量

6.メラトニンの生理作用

 メラトニンは脈拍、体温、血圧を低下させる作用を持ち、総じて睡眠の準備が出来たと体が認識し、睡眠に向かわせる作用があります。上述のごとく、夜になって分泌が促されてそれが睡眠を引き起こし、また朝になって光刺激を受けることでその分泌が抑制され覚醒へと向かう睡眠・覚醒の生活リズムを作っております。上述の如く、年齢が上がるにつれてメラトニンの合成分泌が減少することは、高年齢の睡眠時間が減少することに繋がります。また、メラトニンには全身に行き渡って抗酸化作用を有し、性線刺激ホルモンを抑制することで生殖器の発達、機能を抑えるとされます。

7.睡眠において表裏一体のセロトニンとメラトニン

 必ずしもセロトニンとメラトニンが覚醒および睡眠において拮抗的に働くわけではありません。覚醒時と睡眠時でそれぞれが交互に分泌されることで役割を演じているのです。上で申し上げたことを繰り返しますが、日中の覚醒時にセロトニンは、脳内のノルアドレナリンやドーパミンによる過度な興奮を抑制することで睡眠への準備段階を作り出します。十分なセロトニン存在下において夕暮れから夜となって、光刺激が遮断された状態で、セロトニンからメラトニンが松果体で合成され分泌、これが睡眠誘導に作用します。セロトニンとメラトニンは、昼間の覚醒と夜間の睡眠と言った生活リズムを規定する重要なホルモンであります。

セロトニンとメラトニンの関係


◇ 加齢による睡眠時間の減少と適正な睡眠時間

 よく加齢に伴い睡眠時間が短くなると言われておりますが、これには、以下のごとく、直接(生理的)原因と関節的な原因が考えられております。

1.加齢に伴う睡眠時間減少の直接(生理的)原因

 1)日中の消費するエネルギーが少なくなり、必要とされる睡眠量が減る 
 2)加齢に伴い1日の最高体温が低下、睡眠時間で体温を下げるための時間が短くなる
 3)睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が減り、入眠しにくくなる

2.加齢に伴う睡眠時間減少の間接的原因

 1)頻尿で中途覚醒をする
 2)関節痛など痛みを伴う持病がある
 3)昼寝のしすぎ
 4)寝室の環境が悪い
 5)眠りに影響する薬を服用している

 1に挙げた消費エネルギーや体温、ホルモンなど直接(生理的)原因はある程度は仕方のないことですが、2の間接的原因は様々な工夫をする余地があろうかと存じます。

3.年齢による適正な睡眠時間

 さて、睡眠は長く眠れば良い、という訳ではなく、ある程度年齢によって必要な睡眠時間は決まっています。概ね、年齢による適正な睡眠時間は以下の通りとされております。

 00 〜 03歳 : 16時間
 03 〜 12歳 : 10時間
 13 〜 18歳 : 10時間
 19 〜 55歳 : 08時間
 65歳 〜  : 06時間



◇ 睡眠障害による問題

 ここでは、睡眠時間の過不足および断続的睡眠による問題を取り上げて参ります。睡眠時間は多くても少なくても良くないとされておりますし、連続した睡眠が身体に良いことは言うまでもないことです。

1.睡眠過多の問題

 本来必要な睡眠時間以上の眠ると、眠りが段々と浅くなっていきます。そのため睡眠のリズムが狂い、結果、眠りの質が下がるため、眠気がつきまとうようになります。米国カリフォルニア大サンディエゴ校、及び米対がん協会の発表によりますと、睡眠時間が長い人は、心臓発作になる確率が2倍、死亡率は3.5倍ほど上昇にするそうです。
 以上から、とかく睡眠不足が話題となりがちですが、必要以上の睡眠時間を取ることは、かえって快眠とは言えない状態を作り出し、健康に悪影響を及ぼすようです。

2.睡眠不足の問題

 子どもが育つには、成長ホルモンが必要です。この成長ホルモンは、深い眠りときに、脳の下垂体から大量に分泌されるので、ぐっすり眠る子供はよく育つは理にかなっているのです。逆に、子供の睡眠不足は成長を阻害することになるわけです。
 ホルモンの項で触れました通り、睡眠は体のメンテナンスに深く関与しております。睡眠不足は身体に不調を来すことは言うまでもなく、例えれば、人は何も食べずに生きていられるのは2週間が限界とされる一方、睡眠を取らない場合はもっと短く約10日間で死に至ると言われています。
 また、睡眠が不足すると、食欲を増進させる働きを持つペプチドホルモンに「グレリン」が増加する傾向にあるため、睡眠不足の人は過食にもなり、太りやすいと言われています。

3.断続的睡眠の問題

 正しい睡眠は、人間の脳に対して記憶を整理する作用があることが知られています。生理的なパターンを壊した、断続的な睡眠が記憶に悪影響を及ぼすことが判明しました。米スタンフォード大学の研究チームによると断続的な睡眠は、覚醒時の判断力を低下させるだけではなく、記憶力にも悪い影響を与えると報告しています。


◇ 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome, SAS)

 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome, SAS)をご紹介します。原因は睡眠の問題ではなく、多くは気道閉塞および中枢性の障害ではありますが、睡眠中の頻回の覚醒、睡眠不足、日中の集中力低下を伴うため、ここでは睡眠障害の1つとして扱います。

1.概念

 睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる病態です。具体的には以下で診断、定義されます。

 ・無呼吸(Apnea):10秒以上の呼吸停止
 ・低呼吸(Hypopnea):正常呼吸の50%以下が10秒以上持続
 →無呼吸/低呼吸が毎時5回以上を睡眠時無呼吸症候群と定義


2.原因

 ・閉塞性:睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がりための気道閉塞
 ・中枢性:脳血管障害・重症心不全などによる呼吸中枢の障害

3.症状

 睡眠時無呼吸症候群には以下の症状を伴います;就寝中の意識覚醒の短い反復、およびそれによる脳の不眠、昼間の耐えがたい眠気、抑うつ、頻回の中途覚醒、集中力の低下、(家族などが気づく)睡眠時の呼吸の停止、(家族などが気づく)大きな鼾(いびき)など、(家族などが気づく)夜間頻尿、起床時の頭痛、インポテンツ(女性の場合は月経不順)、のどの渇く、こむら返り、などです。
 家族などの同居者がいない場合、この病気の発見は遅れやすく、特に自覚症状が弱い場合は誰にも発見されないため、その状態が徐々に悪化して深刻な問題となることもあります。よくある深刻な問題の例は、自動車の運転中の強い眠気による人身事故であります。そうした事故をきっかけに病態が判明することもしばしばです。また、同居者がいてもこの病気に関する情報を持っていなければ、単に「いびきをかきやすい性質」としか認識されず、治療開始が遅れることもありえます。睡眠時無呼吸症候群に特有のいびきは、通常の一定リズムではなく、しばらく無音のあと著しく大きく音を発するという傾向です。

4.治療

 ・カロリー制限による上気道周辺の脂肪組織の減量
 ・睡眠中における持続陽圧呼吸療法
 ・スリープスプリント(マウスピース)による下顎の固定、気道狭窄の予防
 ・外科的治療


◇ 快眠のための工夫

 いよいよ、本投稿の最も大切な部分です。いろんな人が快眠のための工夫を提案しております。この部分に関しては、新しい情報を得次第、随時、更新して参ります。

1.寝る前に体温を上げる!

 人間は、上でも申し上げた通り、日中活動している間は体温が高く、夜、睡眠中には体温が下がります。この体温低下の幅が大きいほど、寝つきが良く、深く眠ることができ、中途覚醒もありません。つまり、眠りに就く前に体温を上げておくと、脳は体温を下げようと指令を出すため、深い睡眠を得られます。体温を下げるためには体中の血液を冷やす必要がありますが、この役割は手足が行います。手足の表面に熱い血液が流れてきて、汗をかくことにより、体から気化熱を奪って血液を冷やし、体温を下げるのです。ちなみに冷え性の人は体温が高くても手足が冷たく、手足からの放熱ができず体温を下げにくいので、夏でも手袋や靴下をはくことで、放熱を促し、体温を下げやすくなります。以下に寝る前に体温を上げる工夫を列挙しました。

【寝る前に体温を上げる工夫】
 ・夕食には暖かい食べ物を!
 ・寝る2時間くらい前の適度な運動
 ・就寝直前の暖かい飲み物
 ・入浴の工夫(38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりと10~20分、入浴剤も!)

鍋 写真

ストレッチ 写真

お湯割り 梅入り

2.副交感神経優位にスイッチ:入浴、音楽(波の音)、アロマなど

 自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は日中の活動時に働いており、副交感神経はリラックス時や睡眠中に優位となります。体温の項でも挙げましたが、寝る前の入浴は体温を上げるだけでなく、リラックスすることにより副交感神経を優位にして、体を休息モードにスイッチしてくれます。

入浴シーン 写真

 心地よい眠りを得るには、リラックスした感情をつくるのが一番です。1/f の揺らぎで脳内をα波で満たしてくれる、穏やかな音楽や自然界の波の音を聴いて、心身ともにリラックスを図り、眠りの質を上げると良いでしょう。

波 写真

 ラベンダー、カモミール、ローズ、マジョラムなどのアロマセラピーは、リラクゼーション効果があり睡眠を促します。

アロマ 写真

3.メラトニン分泌を促す遮光

 先述の如く、副交感神経優位にして睡眠に向かわせるホルモンであるメラトニンは光刺激の遮断により合成分泌が促されます。就寝前に夜空を見上げて、光の閉ざされた夜をしっかりと実感すること、テレビやモバイルは可能な限り避けることでメラトニン分泌を促す姿勢は求められます。

4.起床の工夫:早起きと朝日

 不眠対策として就寝にばかり気持ちが行きがちですが、起床についても工夫する余地はあります。起床時において、睡眠を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌をしっかりと断ち切るのは光刺激であります。カーテンを開けて朝日を浴びる、あるいは青空を見上げて光の溢れる朝を実感することは一つの工夫になろうかと存じます。確実な入眠のために、その前の起床で朝日を浴びた確実な目覚めを経験することです。

窓越しの朝日

青空10月


◇ あとがき

 我々にとって必要不可欠な睡眠が満足に得られない人が多い現代において、快眠は永遠のテーマかも知れません。今後ともこの問題に取り組む必要はあると考えられ、「総合診療科」を張って行く立場にいて、自分の言葉で説明をできるよう勤めて参ります。


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ある女性の転機から、「女の幸せ」を考える


 ある女性の人生の分岐点に触れ、「女の幸せ」とは?、と考えさせられました。時期と場所と、職種にも言及しない、本人を特定されないかたちで私見を述べたいと存じます。


◇ 女性の略歴

 詳しくは知りませんが、高校卒業後からの20歳代初頭は実家から離れたところでサービス業に従事したそうです。それなりに楽しかったけれど、自分の生き方としてそれでいいのか疑問を感じる日々であったと振り返ります。

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1.資格を得て手に職を持ちたいとの願望から

 当時、交際していた男性がいたそうで、結婚も意識する関係だったそうですが、どうしても、ある種の資格を得て手に職を持ちたいとの願望があって、男性とは別れて、専門学校に通うことになりました。

2.再就職

 資格は比較的簡単に取れ、実家近くに職場が見つかり配属された部署は、本人が希望した、技術を磨くことが求められる専門職でありました。憧れであり、自分が理想としていた職種に胸踊る気持ちで新しい職場に臨み、日々、新しい勉強とその記録、技術向上に邁進しました。
 ちょうどその職場は、それまでとは違った、新しいことを立ち上げる最中でありましたので、当たって砕けろ的な雰囲気もあり、知識を得て自分の中に固定する苦痛も、修練の途上における苦痛を感じることもなく、生き生きと成長し、職場での地位も固まってきました。

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3.第一人者として

 この女性が持つ資格には段階があって、格付けでは彼女のそれは最も低いものでありました。その結果、彼女と同じかそれ以前に入職したメンバーは主任とか係長のような役職が付くようになりました。でも、そういうことに彼女は全く気にかけず、自分の知識と技術習得に専念する日々を送りました。役職が付いたスタッフは、研修や他部署への関わり、若手指導など、本来の仕事以外の業務が課せられますが、彼女の場合は役職が付かないぶん自由な立場であり、それが彼女をその職場における第一人者に押し上げる結果となりました。

4.指導的立場となって壁に当たり

 6年の月日が過ぎて、20代もそろそろ終わりとなって、完全に誰からも頼られる存在になっていましたが、当然のごとく若手に知識と技術を伝えなければならない立場になりました。自分でやれば手際よくスムーズに進む作業を、指導的立場から手を出さずに観ている辛さや、その教えが上手に伝わらない苦しみがありました。かつての自分との、取り組み方や意欲の違い、それに伴う上達の遅さにも悩まされました。一番、心にダメージを受けたのは、指導の甲斐があってある程度は一人前になった若手が結婚退職してしまいました、それも3人も続いて。また一から出直しで新人を付けられて、自分は何をやっているのだろう?、ワクワクして成長した愛すべき職場が色褪せて見え始めました。

5.ある男性と知り合うも

 そんな折、ある男性と知りあい交際を始めました。もう「アラサー」ですので結婚を意識するのは当然ですが、彼女としては結婚しても仕事を続けられるかどうかが最大の関心事でありました。たとえ指導的立場となったものの思うように事が進まない現状であろうとも、お世話になった感謝の気持ちはあるし、何よりまだまだ自分として大きく成長する予感もありました。できれば結婚しても今の職場でいたい、との強い意識が生まれました。
 ところが思わぬ展開へと転がりました。交際を始めて半年ちょっとで、相手の男性が遠くに転勤となってしまいました。期間はなく、こちらに帰る目処はありません。国内ではありますが、もちろん行ったことはない、飛行機でなければ行けないような遠くです。そんな身の上の彼女とお酒を飲み機会がありました。


◇酒の席にて

 彼女は、言葉少なではありましたが、どうしたら良いか心から迷っている様子が伝わって参りました。転勤した彼のところに遊びに行って、そちらに仕事があるかどうかを調査しましたが、彼女の年齢と資格では、今と同等な立場での再就職は難しく、一からやり直すには主婦と兼業では難しいことは明白でありました。彼女の悩みははっきりと、結婚するかしないか、二つに一つの選択にありました。つまり、、、

 ・結婚して「女の幸せ」を取る = 仕事は放棄する
 ・仕事を継続して「人としての幸せ」を取る = 結婚は放棄する


ビール イラスト

 「女の幸せ」、「人としての幸せ」なんて、言い方に語弊があるかも?、極端な選択にも見えますが、彼女の場合、明確な二者択一でありました。20代前半に、充実した気持ちを持って知識と技術を積み上げて来た今の仕事を放棄して「女の幸せ」を掴んだとしても、失うものは大きい、もう一つの「人としての幸せ」はもう二度と戻って来るものではないことを彼女は知っていました。


◇「女の幸せ」とは? アンケート結果から

 自分に合った仕事に恵まれ、自己実現と社会への貢献、充実した日常を送ることは、上で申し上げた「人としての幸せ」の一つの形態であり、これには男女に違いはありません。それゆえ「人としての」と言う言い方をさせていただきました。ここでは「女の幸せ」についておさらいを加えます。前の投稿で紹介しました「生活点検 1992-2016」(博報堂生活総研、男女計3160件)に加えて、「働く女性の恋愛と幸せな人生のガイド マイナビ ウーマン」(22-34歳女性 403件)と言うサイトのアンケート結果を参考にさせていただきました。アンケート結果はいずれも2016年のものであります。

働く女性の恋愛と幸せな人生のガイド マイナビウーマン

1.結婚は「女の幸せ」か?

 「結婚は『女の幸せ』か?」とする質問に対して、22-34歳女性 403件の回答「思う56.8%、思わない43.2%」でありました。6割近い女性が結婚を「女の幸せ」としていますが、逆を言えば4割強の女性が結婚に「女の幸せ」を見出せないようです。

結婚は女の幸せ?
結婚は「女の幸せ」か?

【結婚を「女性の幸せ」と思う人の意見】
 ・旦那と子どもに囲まれて幸せな家庭を作るのが女の真の幸せだと思う
 ・自分だけでなく誰かのために生きる喜びを身近に感じることが女の幸せである
 ・愛する家族に囲まれて一緒に生活していくことができることが女の幸せだと思う
 ・周囲から既婚かどうかで扱いや視線がちがうし家庭がある安心はとても大きい

【結婚を「女性の幸せ」と思わない人の意見】
 ・結婚したからといって幸せとは限らない
 ・結婚しなくても仕事や趣味などがあれば十分に幸せだと思う
 ・自分の収入で衣食住がまかなえて自立できることが幸せだと思う
 ・結婚と幸せはイコールではないが好きな男性から愛されることが幸せだと思う

2.出産は「女の幸せ」か?

 引き続きマイナビ ウーマンのアンケート結果です。「出産は『女の幸せ』か?」とする質問に対して「思う70.7%、思わない29.3%」と、結婚よりも幸せを肯定的に捉える回答が得られました。

出産は女の幸せ?
出産は「女の幸せ」か?

【出産を「女性の幸せ」と思う人の意見】
 ・愛する人との愛の結晶をお腹の中で育み産まれてくることはある種の奇跡だと思う
 ・子どもを産むことで親の愛情やありがたさがより深くわかる

【出産を「女性の幸せ」と思わない人の意見】
 ・子どもがいなくても幸せな人はいるし子どもができても幸せじゃない人もいる
 ・出産を望まない人もいるしできない人もいて、何が幸せかは自分で見つけるものだと思う

3.好きな仕事を続けることは「女の幸せ」か?

 仕事については男女に共通することでありますが、こちらは女性の観点からのアンケートです。「好きな仕事を続けることは『女の幸せ』か?」との質問に対し、「思う80.9%、思わない19.1%」と、さらに肯定的な回答が得られました。

好きな仕事を続けることが女の幸せ?
好きな仕事を続けることは「女の幸せ」か?

【好きな仕事を続けることを「女性の幸せ」と思う人の意見】
 ・したい仕事を思う存分できるのは自分の心のモチベーションが上がり私生活も充実できる
 ・好きなことを仕事にできることはできるようでなかなかできないことだと思う

【好きな仕事を続けることを「女性の幸せ」と思わない人の意見】
 ・好きな仕事を続けることは魅力的だが家庭との両立は難しいと思う
 ・好きな仕事を続けるには誰かの協力や理解がないと無理だと思う

4.女性は出産後も仕事を続けた方がいい?

 出産も仕事も「女の幸せ」に直結する結果が得られております。こちらは「生活点検 1992-2016」の「女性は出産後も仕事を続けた方がいい?」と言う質問に対してのアンケート結果です。男女合計の回答は「思う42.9%、思わない57.1%」で、女性だけに絞った場合は「思う49%、思わない51%」でありました。

出産後も仕事を持つべき?
女性は出産後も仕事を続けた方がいい?

 好きな仕事を続けることが「女の幸せ」と思う女性が8割を超えていたのに対し、現実に出産後も仕事を続けた方がいいと答えた女性は5割に止まりました。これは上の意見にもありましたように、出産後の仕事と家庭との両立の難しさ、誰かの理解と協力の必要性に基づくものと思われます。


◇あとがき

 人の幸せを左右するのは結婚や仕事だけではありませんが、こと「女の幸せ」について語る場合に、結婚と仕事が大きな要素となって参ります。現状の人間社会、少なくとも日本においては、結婚と仕事はしばしば「幸せ」に繋がる要素として相反するものとなります。結婚をすることによる「女の幸せ」と、仕事を優先して結婚をしないことによる「女の幸せ」があると言うことです。
 結果として、上で紹介した女性がどんな人生を選択したかは申しませんが、その彼女の「女の幸せ」のためにはこうあるべきと言うものはありません。男女を問わず「幸せ」を感じることは、それ即ち「人生観」であり、あの女性自身が何をもって己の「女の幸せ」とするか?、それは己の感性であり、決定するのは自分でありました。
 「女の幸せ」は、男のものとは異なり、また単純に「人の幸せ」とも違う、独立した考え方と思われました。これは、社会制度からの影響を受け、またフェミニズムとも関連する人生観にも立脚したものでありますので、時空を超えて変化するものとも考えられました。

 最後に、上で紹介した女性が幸せな人生を歩まれることをお祈り申し上げます。



がん患者の臨終に垣間見る日本人の死生観


 先日の日曜日の午後、久しくなかったご臨終に遭遇し、いわゆる「看取り」を行いました。もうそろそろ30年の医者生活で、無数の患者の死に触れて来て、いつも同じ、家族の反応もほとんどいつも通りである様を見て、「日本人の死生観」を垣間見た気がいたしました。

◇ 直近とこれまでの看取り症例から

 日曜日の患者は79歳男性、若くはないものの、すごくご高齢でもなく、大腸がん術後再発による終末期の状態でありました。骨と皮にやせ細り小さくなった身体から呼吸が失われ、心電図のモニターがフラットになったところで病棟に呼ばれました。がん患者の最期は明白であり、確かめるまでもないところですが、型の如くペンライトで対光反射がないこと、聴診器で心音、呼吸音がないことを確認し、言葉を發することなく、集まった遺族に向かって一礼した後に両手を合わせて合掌、患者に深々とお辞儀をしました。無言の死の宣告であります。
 病院の個室にお集まりいただいた関係者は、奥さんと、長男、長女、次女にその子供たち、つまりお孫さんたち、それに患者の友達なのか兄弟なのか、年配の男性が2人ほどでした。静寂の中、奥さんと思われる女性が「ありがとうございました」と頭を下げました。目は潤んでいるようでしたが、涙を流すことはなく、声はしっかりとしておりました。私の死亡確認の行為に対してではなく、長くお世話になった病院に対するお礼のその言葉以外に声を発する人はなく、皆が冷静であり、厳かで落ち着いた空気が漂う病室を後にしました。

看取りの場面 写真

 老若男女、慢性または急性、様々な病気や外傷で、いろんな種類の「人の死」がありますが、私が遭遇して来たのは、お年を召された方のがん死が最も高い頻度でありました。ですから、「人の死」としてはごく一部を見ているに過ぎません。そうした母集団に関して言えば、今回の患者と同様に、多くの症例で、その家族は患者の死を受け入れており、涙することはあっても、穏やかな表情は、声を荒げることなく、泣き叫ぶこともなく、厳粛にその時を迎えて、いかにも死にゆく身内を優しく送り出す豊かな心境を感じます。
 米国留学の際にいくつかの死を目の当たりにし、身内の臨終に触れて、大声を挙げて泣き叫ぶ白人も黒人もいましたし、病室に神父と思しき人物を入れて聖書の朗読をいただき、必死に心を鎮める遺族もおりました。圧倒的に日本人に対する経験の方が多いので比較しようはないのですが、「人の死」に対する受け入れ方が日本人と、私が見た数少ないアメリカ人では違った印象でおりました。


◇ 日本人の意識調査から

 「生活点検 1992-2016」と言う日本人へのアンケートに基づく意識調査のサイトがあります。その中で、宗教を信じる日本人は23.8%と二割そこそこでありました。一方、来世を信じる人は30.7%であり、霊魂を信じる人は32.2%とそれぞれ三割を超えてきて、これらはこの15年間でほぼ変わらない数字であり、年代別では60歳以上で低く40歳代の方が高い割合でありました。

生活点検ホーム 写真

 このことは、日本人の「死」に対する感性が、欧米人のそれとは異なり、キリスト教やイスラム教、もちろん仏教などの、宗教に立脚したものではなく、もっと以前の民族に備わったものであることを伺わせます。日本人の死生観が、宗教として教えを受けたものでも、信仰に基づくものでもない、いわゆる国民性であること、それは我々、一般的な日本人が実感していることであることは言うまでもないことであります。


◇ 日本人の死生観を垣間見る事象

 なかなか他国との比較は難しいのですが、日本人固有の死生観をうかがい知る事象がいくつかあります。上で申し上げた国民感情に関するアンケートもその一つであります。

1.「死出の旅立ち」へ向けた行い

 当ブログでも取り上げました「人の死」に際しての行いとして、旅立つ死者に化粧を施す「死化粧」があり、これは映画「おくりびと」でも、納棺師の神聖な仕事を紹介しつつ、「死」が遠く新しい場所に通じる扉に過ぎないと言う信念を伝えております。

2.「死」における落ち着きと冷静さ​

 上の看取り症例で描写したものと重なりますが、日本人は、親戚や家族、親しい人が亡くなっても、声を張り上げて泣き叫ぶことはほとんどなく、涙を流す姿さえあまり見ないとされます。葬式に参列している人は、すでの現実を受け入れた表情で、動じず、落ち着いていることが多く、一方で、スピーチに際しては、「(先に他界した)○○ともう会ったかしら?」、「(あの世から)私たちを見守って下さい」と、「死」と言うものは、やはり新しい世界への移動であり、生きている現世と連続した世界に繋がるものとの概念が見られます。

3.武士道精神における死生観

 古代の武士道に、「夏の花の如く艶やかに生き、秋の枯葉の如く穏かに終りを迎えよ」という精神がありました。また日本の武士道には桜の花に例える部分がありました。桜は咲いてから散るまでが七日間に過ぎないという意味の「花七日」という言葉がありますし、日本の軍歌には「同期の桜」と言う歌があり、咲きながら散っていく桜の花は、はかない命のようで、美しく生き、清く死ぬという武士道の精神を歌っております。「命を惜しむことは恥」であり、生きていることは常に「死」と隣り合わせである発想が見え隠れいたします。

4.日本の自然環境が「仏」の発想へ

 生きていることは常に「死」と隣り合わせと申しましたが、これは身近に思い当たる節があります。直近では九州北部に豪雨災害がありました。日本は古来から災害が多い自然環境であるため、昔から、日本人は人生ははかないものであることを悟り、死ぬと清らかで、万物を超越した存在になるという意識が少しずつ形成されてきたことが考えられます。良い人も悪い人も、死ねば潔白で、皆が「仏」になれるという意識が形成された可能性です。

5.墓地や仏壇の局在

 より身近な発想として、日本の墓地が住宅街付近にあり、また、家庭によっては仏壇を置いて死者と家で共存しようとする現実があります。これは、日本人にとって、生と死後がいかに近いものであるかを表しており、霊魂が不滅であるとする日本人の死生観を示す事象であります。


◇ あとがき

 あるがん死の患者の看取りから日本人の死生観にまで持論を発展させました。「人の死」には様々な場合がありますし、同じがん死であっても、若い人の、現世への強い心残りなど、その死を遺族が受け入れられない場合は少なからずあります。これが事故であったり、災害でも、不測の事態であれば、それは一元的に規定されるものではありません。そうした流動性を持たした上で言えることは、死は命の一部であり、尊厳を持って生き、尊厳を持って死に、死んでからも霊魂は新たな旅に出る、と言う死生観が日本人にはあると考えられます。

痛風予防、高尿酸血症 対策(第二版)


 いつもながらの私事、この春の職場の検診結果にかなりの危機感を持ちました。自分のためのお勉強、「痛風予防、高尿酸血症 対策」の第二版です。

 高尿酸血症から発症する痛風、ゴルフ友達の一人が患って苦労したと聞きました。痛風とは、尿酸(UA, uric acid)が体内に蓄積し、それが結晶(尿酸塩)となって激しい関節炎を伴う病態です。ひとたび発症すると関節痛は激烈で「痛風発作」と呼ばれ、放置すれば体の各所に痛風結節が発生して、腎盂尿管に尿酸結石が発生して、腎臓機能障害も引き起こします。
 ここでは、高尿酸血症の是正について、食生活を中心に、高尿酸血症治療薬に頼らない方法論を考えて参り、発症した痛風の治療については他に譲ります。


◇ 尿酸 uric acid とは?

 まずは基本的なところで尿酸とはなんぞや?、と言うことです。尿酸(C5H4N4O3)は分子量168の有機化合物で膀胱結石の中から発見された物質だそうです。いわゆるカルシウム結石ではない、尿酸結石の研究で、尿中の尿酸が析出して結晶を作ることが明らかになりました。
 その後、尿酸は生物の情報とエネルギーと言う重要な役割を果たす物質の最終産物である事が判明しました。つまり、遺伝子を構成するDNA(デオキシリボ核酸)やエネルギーを担当するATP(アデノシン三リン酸)の、プリン体と言う物質が分解されてできた老廃物が尿酸であります。

 尿酸 = プリン体の代謝産物(老廃物)

 遺伝子やエネルギー物質が代謝された分解産物ですので、そうした食べ物を摂取しても、あるいは体細胞が壊れても発生しますので、人間の体では常に作られて排泄されている物質であります。正常な成人の体では1日に約0.6 gの尿酸が作られるとされます。

尿酸の構造式
尿酸の元素記号


◇ 高尿酸血症から痛風発症のメカニズム

 「尿酸が高い」と言うとすぐに痛風を思い起こすほど、高尿酸血症と痛風は一元的な繋がりを持つ病態であります。まずは、高尿酸血症から痛風発症のメカニズムです。

1.尿酸塩の析出

 血液中に溶け込んでいる尿酸濃度の上限は7 mg/dl前後とされており、この飽和濃度を超えると、痛風発症の最初の段階として、血液中の尿酸が尿酸塩として組織に析出し結晶を作ります。

尿酸結晶の写真
析出した尿酸塩の結晶

2.尿酸塩に対する防御機構

 尿酸塩の結晶は足の関節内面に沈着しやすく、これに対する体の防御機構として好中球(白血球の一種)が反応して局所に炎症が起こります。これが痛風発作として最初の発症となります。

3.痛風結節

 尿酸塩は関節のみならず他の臓器にも析出して結晶の溜まり結節(痛風結節)を作ります。最もできやすいのが皮下で、稀に脊柱管にできて脊髄を圧迫して神経症状を起こすこともあります。

痛風結節 の写真
足の関節にできた尿酸結節

4.尿路結石と痛風腎

 尿酸は尿排泄なので、高尿酸血症は尿酸結石と言うかたちで腎盂、尿管などへ尿路結石を作ります。また、尿酸塩は腎実質に沈着して腎障害を起こすことがあります。これを痛風腎と言い、慢性腎不全に移行する可能性があり、人工透析患者の1%を占めるとされます。

5.肥満

 痛風の原因である高尿酸血症の、さらなる原因の一つに肥満があり、痛風と肥満は密接な関係にあるとされます。脂肪組織の増加はインスリン感受性を低下させ、これは尿酸の排泄に悪影響を及ぼすとされます。また、内臓脂肪に多く含まれる中性脂肪の増加は、遊離脂肪酸の分泌に繋がり、これが肝での、尿酸の先駆物質であるプリン体の代謝を促進します。これも高尿酸血症の原因となります。


◇ 高尿酸血症の原因

 検診あるいは人間ドッグにおける検査データ、血清尿酸値(UA, uric acid)の基準値は、男性 3.8 - 7.5 mg/dl、女性 2.4 - 5.8 mg/dlとされます。ここでは高尿酸血症の原因を多岐に渡りご紹介します。もちろん、原因を除去することが高尿酸血症の是正になりますので、最後の「高尿酸血症 対策」の項では重複した内容となるものもあります。

1.人間には失われた尿酸酸化酵素

 ほとんどの動物では、尿酸は分解されますので体内に蓄積することはありません。ところが、人間とヒト上科霊長類(テナガザル、オラウータン、チンパンジー、ゴリラ)には尿酸を分解する尿酸酸化酵素(尿酸オキシダーゼ, uric oxidese)が欠損しており、尿酸はプリン体の最終産物となっております。この酵素を作る遺伝子は存在しますが、壊れているとのことです。ですから、高尿酸血症および痛風は、人間を含むこれらの動物にしかない病態であります。

2.遺伝的素因・性差

 尿酸排泄に関わる遺伝子が幾つか解明されておりますので、高尿酸血症および痛風に遺伝的素因は言われております。同時に、尿酸排泄に女性ホルモンが関与するため、同ホルモンが豊富な女性は男性よりも尿酸値が低く、痛風の罹患率は男女比98.5:1.5と圧倒的に男性が多いとされます。

3.食生活

 プリン体含有量の多い食品を摂取すればその代謝産物である尿酸が体内に蓄積します。最も尿酸値に影響するのが食生活です。概ね、肉食も海産物も血中尿酸値を増加させ、野菜、乳製品は尿酸を減らすと考えられています。また、痛風の患者さんの60%に肥満があり、肥満度が大きいほど尿酸値は高くなります。高カロリーそのものも血中尿酸値に影響する因子です。後ほど、食品ごとのプリン体含有量をまとめますが、食生活におけるプリン体摂取のコントロールが推奨されるところです。

4.脱水と水分摂取

 食生活に近接したところで、尿酸は尿排泄ですので、水分を摂取することで尿量が増加して尿酸排泄は促されますが、逆に下痢や発汗、水分制限による脱水は利尿を制限して尿酸を保持する形になりますので尿酸値を上げます。

5.運動

 スポーツは体に良い印象がありますが激しい運動や肉体労働は血中尿酸値を上げる原因となります。これは過度の運動により筋肉の新陳代謝が上がり、簡単に言えば、筋肉の細胞が壊される結果、自分の体細胞中のプリン体が遊離するからであります。また運動による発汗は上述のごとく脱水を引き起こし、これは血中尿酸値の上昇に繋がります。

6.薬剤

 薬剤の中には尿酸値を上昇させる副作用を有するものがあります。サイアザイド系降圧利尿薬(フルイトラン など)、ループ利尿薬(ラシックス、フロセミド など)、喘息治療薬のテオフィリン(テオドール など)、結核治療薬のピラジナマイド(ピラジナミド など)、アスピリン(小児用バファリン など)であります。成人病である高血圧の治療薬として利尿剤が処方されていて、高尿酸血症が認められたので、今度はそれに対する治療薬が処方される、医療の歪みがそこに見え隠れします。


◇ 食品別プリン体含有量(mg/100g)

 プリン体含有量の多い食品の摂取が高尿酸血症ひいては痛風の原因となることは明白であり、ここでは食品別のプリン体含有量を表にしました。あらゆる単位はmg/100gであり、食品100gあたりのプリン体量(mg)であります。各食品類についてプリン体含有量の多い順に並べております。また、酒類のビールとその周辺飲料については過去のブログ文章を参考にしていただければ幸いです。

食品中のプリン体

【ビールの銘柄別組成(350 mlあたり)】
ビール データ


◇ 高尿酸血症の対策

 血中尿酸値が上昇する原因を論じて参りましたので、その原因を除去することが高尿酸血症の対策となることは明白であります。ビールや肉食など、プリン体含有量の多い食品の摂取を控え、カロリー制限から肥満を改善し、激しい運動による体細胞の分解を理解し、十分な水分補給と薬剤の副作用に意識をもつことは肝要です。ここでは、まず改めてプリン体摂取を是正する食生活をまとめたところで、原因論から考える高尿酸血症対策ではなく、積極的に血中尿酸値を低下させる方策を勉強しました。

1.プリン体摂取の抑制

 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」には「生活指導」の中に食事療法、特に「1日400 mgを目安にしたプリン体の摂取制限」が示されています。上で「食品別プリン体含有量」を示したばかりですが、改めてプリン体の含有量が「極めて多い」、「多い」、「少ない」、「極めて少ない」食品を分類いたします。

 1日400 mgを目安にしたプリン体の摂取制限

【プリン体含有量が極めて多い食品(>300 mg/100 g)】

プリン体が極めて多い食材

【プリン体含有量が多い食品(200〜300 mg/100 g)】

プリン体の多い食品

【プリン体含有量が少ない食品(50〜100 mg/100 g)】

プリン体が少ない食品

【プリン体含有量が極めて少ない食品(<50 mg/100 g)】

プリン体が極めて少ない食品

  プリン体と言うとビールがその代表格とされがちですが、実際には350 mlの1本ではどんなに多くても50 mg以下であります。宴会などで「生チュー」を何杯も飲んで3 Lにも及べば一日摂取量限界の400 mgを超えて来るので要注意と言ったところです。

 プリン体含有量が極めて多い食品として要注意No. 1は干し椎茸で、二番手はちりめんじゃこでしょう。干し椎茸は煮物にされる場合が多いですが、ヘルシーとの認識からついつい食べてしまいますし、ちりめんじゃこは不足がちなカルシウム摂取を目論んで毎朝でも食べる食材です。鳥レバーやあん肝、いわしの干物を習慣性に食べる人は少ないでしょうが、ビールのつまみになるケースはあるでしょう。これらも要注意な食品であります。
 これに対して、プリン体含有量が極めて多い食品であっても、干しエビ、鰹節を100 gも食べることはあり得ません。焼きそばやお好み焼きなどの隠し味としての干しエビ、豆腐に乗せて食べる鰹節などはプリン体を意識するほどではないと思われます。

 プリン体含有量が多い食材には、かつお、鯵の干物があります。「フィッシュオイル」などと、健康に良いとされる魚介類ですが、プリン体摂取と言う観点からは要注意な食材であります。

 プリン体の含有量が少ない食材として、野菜、穀物、卵、乳製品が散見されますが、その中で目を引くのは、豚バラ、牛タン、ソーセージ、ベーコンなどの肉類と、魚介類でもホタテ、うなぎ、かまぼこ、もづく、いくらであります。不思議なことに同じ魚卵であっても、明太子といくらでは40倍くらい明太子の方がプリン体含有量が多いようです。

2.尿をアルカリ性にする食生活

 尿酸はアルカリ性の液体に溶けやすいことから、尿酸の尿中排泄を促すため尿をアルカリに傾かせる食生活が推奨されております。アルカリ性食品を摂取することで尿をアルカリに傾ける発想ですが、具体的に、アルカリ性食品として代表的なものは野菜の中でもほうれん草やにんじんといった緑黄色野菜の他、海藻類や大豆食品などがあります。その他、アルカリイオン水、バナジウム天然水と言ったアルカリ性天然水も尿のアルカリ化に効果的とされます。

【尿を酸性にする食品】
 卵/豚肉/サバ/牛肉/アオヤギ/カツオ/ホタテ/白米/ブリ/マグロ/サンマ/アジ/カマス/イワシ/カレイ/アナゴ/芝エビ/大正エビ

【尿をアルカリ性にする食品】
 ひじき/ワカメ/昆布/干しシイタケ/大豆/ほうれん草/ゴボウ/サツマイモ/ニンジン/バナナ/サトイモ/キャベツ/メロン/大根/カブ/ナス/ジャガイモ/グレープフルーツ

3.利尿作用のある緑茶・コーヒー・酒

 緑茶やコーヒーには利尿作用がありますので、十分は水分補給と同時にこれらの嗜好品を摂取することは尿酸排泄に有効とされます。同様にアルコールにも利尿作用がありますし、水分補給にも有用です。焼酎やウイスキーのようにプリン体を含有しないアルコールであればむしろ高尿酸血症に有効と考えられます。

4.乳製品で尿酸の吸収阻害

 最近、「プリン体と戦う乳酸菌」と言うキャッチフレーズが目につきます。「明治プロビオヨーグルトPA-3」(下写真)がそれですが、実際にはヨーグルトの乳酸菌は胃酸で分解されてしまうため、その種類についてはあまり意味をなさないとされております。

PA3写真 18cm

 しかしながら、乳製品全般に、腸内細菌を整える効果が認められており、乳酸菌が分解された物質が材料となって、腸内で新たな善玉腸内細菌が作られと言われております。ヨーグルト、牛乳、チーズなどの乳製品の摂取は腸内細菌叢の転換から尿酸吸収を阻害する考えられます。

5.その他

 尿酸値を下げる物質として、ビタミンC、梅干しに多く含まれるクエン酸、アミノ酸の一種でサプリメントとして販売されているアセナリンなどが有効とされています。